ドルビーアトモス(Dolby Atmos)は、立体的な室内サウンドシステムとしてホームシアターなどに浸透しつつありますが、米EV新興企業のルーシッド・モータース(Lucid Motors)との提携により、自動車に搭載されることになりました。四輪車への導入は今回が初めて。ルーシッドが近々発売を予定している高級EV『エア(Air)』に搭載予定で、車内には21個のスピーカーが装備されます。
これは、ルーシッドが「シュール・サウンド(非現実的なサウンド)」と呼ぶオーディオシステムの一部であり、フロントやリアはもちろん、頭上のヘッドライナーにもスピーカーを配置しています。
車内で再生するコンテンツに特別なチューニングを施し、頭上を含めた車室内を音が移動するような感覚が期待できるようです。アトモスというと映画のイメージが強いですが、新譜やリマスターされたクラシックなど、音楽にも採用されるケースが増えています。
もちろん、ドルビーアトモス対応作品でなければ、本来の性能を発揮できません。しかし、21ものスピーカーを搭載していることから、通常の作品であっても高音質が期待できるはずです。
また、このスピーカーは単なるエンターテインメント用ではなく、エアに装備される安全システムにも活用されます。例えば、シートベルトの警告音は、警告を発したバックルの方向から聞こえるようになります。また、走行中にブラインドスポットモニターで周辺車両を検知した際は、接近してくる車両の方向から警告音が聞こえます。
さらに、ルーシッドによると、この技術を方向指示器にも使用し、クリック音が実際にライトが点滅している側から聞こえてくるようにするといいます。右折時には右側から、左折時には左側から「カチカチ」という音が鳴るようです。
こうした斬新な技術を搭載するルーシッド・エアですが、製品化までの道のりは長く、まだ完成には至っていません。ルーシッドは昨年末からエアのオンライン予約を開始し、コンソールゲームでおなじみの技術を使ったコンフィギュレーターを導入して、購入希望者が自分好みのエアをデザインできるようにしています。
北米での価格は、最も安価な仕様で77,400ドル(841万円)から。ただし、安価な仕様が発売されるのは2022年以降で、現時点では169,000ドル(1,836万円)の初期限定モデル「ドリーム・エディション」のみが予約を受け付けています。ドリーム・エディションの納車は今年後半に開始される予定です。
一方で、ルーシッドはすでに新モデルの開発に取り組んでいます。コードネーム「プロジェクト・グラビティ(Project Gravity)」と呼ばれるSUV型のEVですが、生産開始は2023年になる見込みです。