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Arm、知的財産へのアクセスを無償で提供するスタートアップ向けプログラムを開始

英Armが、新規スタートアップ企業向けにチップ技術に関する情報を無償で提供すると発表しました。「Arm Flexible Access for Startups」と呼ばれるプログラムでは、同社のプロセッサデザイン、ツール、およびテクニカルサポートを条件を満たしたスタートアップが無料でアクセスできます。

スタートアップ企業向けのプログラムは、Armが2019年中旬から開始した「Arm Flexible Access」というプログラムをベースにしています。これは、年間約7万5000ドル(約800万円)の使用料を支払うことでArmの知的財産にアクセスでき、費用を抑えてArmベースのチップを使った開発を可能にするプログラムでした。資金調達額500万ドル(約5億3,326万円)以下のスタートアップ企業を対象にしたArm Flexible Access for Startupsプログラムは、Arm Flexible Accessと同様の情報やテクニカルサポートの提供を受けることができます。

Armのチップセットアーキテクチャは、Qualcomm、Apple、Samsungを始めとする多くの企業にライセンスを提供しています。Arm社の製品といえば、スマートフォンやタブレットにチップに使われるCPUやGPUを思い浮かべますが、実際には、カメラ用の画像信号プロセッサ、セキュリティ専用チップセットや、低消費電力のIoTデバイス用ハードウェアなど、その製品は多岐にわたります。Arm Flexible Access for Startupsプログラムでは、それらの多岐にわたる製品の知的財産が対象となります。

Armによると、Arm Flexible Accessプログラムには、これまでにIoT、自動運転、医療用ウェアラブルなどの分野の40以上の企業が参加しているそうです。Armは、新規スタートアップ企業に無償で知的財産へのアクセスを提供することにより、スタートアップがプロトタイプを構築し、本格的な製品開発に向けた資金調達を確保するのに必要な期間を短縮し、費用を抑え、さらにはリスクを軽減することに寄与できると考えています。

近年のテック業界では、製品開発に最先端のチップや専用チップを必要とすることが多く、資金繰りが苦しいスタートアップ企業にとっては大きな障害となっています。新型コロナウイルスの世界的大流行は、新規スタートアップ企業の資金調達に影響を及ぼすと予測されるなか、ArmのArm Flexible Access for Startupsプログラムは歓迎されるべき動きと言えるでしょう。