毎年の楽しみに、テックジャイアントに立ち向かう新興企業の登場があります。世界の強者に弱者が立ち向かう物語を心待ちにしているユーザーもいることでしょう。例えば、OnePlus、Xiaomi、Asus、およびiPhoneやSamsung Galaxy Sシリーズなどのヘビー級チャンピオンと、威勢良く一戦を交えようというチャレンジャーを期待しているのです。さて、2020年も3分の1が経過してしまいましたが、現在では有名なスマホメーカーにチャレンジする注目株はほとんど見られません。最新のOnePlus 8および8 Proモデルを発売したばかりのOnePlusでさえ、「既得権」を享受する既存メーカーと同じ価格帯で販売されています。今年はOnePlusが提供価格に自慢げに言及することはなさそうです。
OnePlusはフラグシップに成長してしまった
OnePlusは、以前のような低価格帯のフラッグシップモデルではなくなりました。2014年のOnePlus Oneは、CPUにSnapdragon 801 SoC、3 GBのRAM、およびわずか299ドル(32,079円 2020年4月26日現在 )の5.5インチの大型1080p LCDディスプレイで、世界中のユーザーを驚かせました。OnePlusは毎年そのような調子でしたが、価格は毎年約40ドル(4,298円 2020年4月26日現在)ずつ値上げさせていました。2018年までに端末価格は500ドル(53,730円)を突破し、ついにOnePlus 8 Proで1000ドル(107,460円)近くに達しました。
OnePlusはもはやフラグシップに立ち向かう「チャレンジャー」ではありません。むしろOnePlusが倒そうとした「ボス」たちと一体になってしまったかのようです。各モデルの品質面はプラグシップの評判に値するモデルですので、何か巧妙なマーケティング施策があったわけでもありません。そしてOnePlus 8でさえ、S20のようなSamsungのエントリーフラッグシップ製品に近い価格で提供されています。消費者は市場の動向との乖離にすっかり取り残されているようです。「それなりの品質」を破壊的な価格で求めていたユーザーにとっては、まさに心に大きな空白を残しているのです。
スマートフォン市場の状況
米中の貿易問題により、多くの中国メーカーへの信頼が揺らいでいるため、2つ目の問題が明らかになっています。中国の貿易戦争は「中国のハイテク企業と、長期的な関係を維持できるのだろうか」と疑問符をつけたのです。2019年、トランプ大統領が米国企業が中国のハイテク企業との提携解消の期限を軽々しく扱っていたため、ユーザーは数ヶ月の間、不安を我慢しなければならなかったのです。Androidやクアルコムのように、慣れ親しんだソフトウェアがいつか機能しなくなる、そのようなリスクを抱えるデバイスを購入したいと思う人はほとんどいないでしょう。
OnePlusやXiaomiのような中国のスマートフォンと、PocophoneやRedmiのようなさまざまなスピンオフは、だいたいの場面でフラグシップモデルへのチャレンジャーと位置付けられていました。しかし、中国と米国の技術問題が今後どのような展望見せるのかは不透明です。したがって影響を受ける恐れのあるデバイスを前に、世界中のユーザーが購入をためらう可能性があります。
最近リリースされたOnePlus以外の低価格帯のフラッグシップも、市場ではあまり騒がれませんでした。Snapdragon 855と大きなAMOLEDディスプレイにもかかわらず、Meizu 16Tは2019年10月にひっそりと発売されました。同様に、Realme X2 ProやAsus Zenfone 6などの他のフラッグシップキラーは、手頃な価格にもかかわらず、あまり存在感を示さなかったのです。
コストの上昇が新興メーカーを苦しめる
フラッグシップモデルにおいて最も高くつく部品1つはプロセッサです。フラッグシップモデルの購入者は、Snapdragon 865を搭載する最新かつ最高の製品を求めています。もし仮にメーカーが独自のポリシーを貫けるとしら、きっとそのリクエストには応えず、見送ってしまうことでしょう。Snapdragon 865での大幅な価格の上昇は、5Gモデムによるものです。フラッグシップに挑戦するメーカーは、価格を低く抑えるのに相当苦労するか、古いスペックの部品を使わざるを得ないでしょう。
フラッグシップキラーも、最高のカメラの品質を競うレースにはめったに参加しません。大手メーカーに匹敵するRAMやプロセッサを搭載していたとしても、シャッターに詳しいユーザー層を満足させるカメラではないのです。今日のカメラモジュールはより複雑になっています。最上位機種のトレンドは、複数のレンズや飛行時間センサーまで、1つのデバイスに5つのセンサーを搭載しています。ますますコストは上昇するばかりです。
GoogleとAppleが見せた新しいアプローチ
GoogleとAppleは、低価格を維持しながら、1つまたは2つの機能に優れたスマートフォンで世に問うことにしました。Pixel 3aとiPhone SEです。Google側はカメラ機能に優れ、もう一方は「Appleであること」が特徴です。とはいえPixel 3aに続き、iPhone SEもヒットする可能性を秘めています。
Pixel 3aやiPhone SEが提示したポイントは何でしょうか。この2機種のような基本的なデバイスは、フラグシップモデルの対抗馬を求めるようなユーザーにとっては、少し異なって映るかもしれません。ただフラッグシップモデルであろうとなかろうと、予算重視のスマートフォンはどの土俵で戦うのかを選択する必要があります。そして必ず勝たなければなりません。
最新のフラッグシップキラーはすべてをそのボディに詰め込みますが、このアプローチには明確な弱点があります。カメラとプロセッサのコスト上昇の圧力にさらされているのです。彼らの価格は実際のフラグシップモデルに近づきすぎていますが、これらの「予算重視」のモデルの多くは、価格に裏付けられる長期的なサポートを提供できない可能性があります。
ワイヤレス充電を諦め、5Gへの対応も捨て、カメラモジュールを減らすなど、いままで登場したチャレンジャーは常に何かしらの犠牲を払っていました。低価格を維持するために機能を取捨選択したのです。かつてのOnePlus OneやPocophone F1のようなサクセスストーリーがもたらしたのは何でしょう。おそらく、小規模ながらも、フラグシップモデルへの挑戦を応援する、活発なユーザーグループの存在を示したのでしょう。