今やAIは自動運転や医療診断、資産管理など、私たちの目、耳、脳となり、さまざまな領域で利用されています。そして今、AIの研究は新たな領域に足を踏み入れたようです。その領域とは「嗅覚」。米インテルラボと米コーネル大学は、人間の嗅覚システムを模倣したニューロモーフィックチップを開発したと発表しました。
「Loihi」と名付けられたこのニューロモーフィックチップは、人間の嗅覚システムを模倣したアルゴリズムにより有害な化学物質のにおいを学習し、判別することができます。インテルのNabil Imam氏とコーネル大学のThomas A. Cleland氏が学術雑誌「Nature Machine Intelligence」にて発表した論文によると、行われた実験でLoihiは10種類の異なるにおいを嗅ぎ分けることができたそうです。
人工的に空気の流れを発生させる装置に、アセトン、アンモニア、メタンを含む、10種類のガス状物質(におい)を放出し、72個の化学センサの反応データを収集。収集された化学センサのデータはLoihiに供給され、Loihiは、個々のにおいが引き起こす嗅覚システムの反応を素早く学習し、たった1回の訓練サンプルでにおいを学習することに成功したそうです。それだけでなく、Loihiは複数のにおいが混ざっていた場合でも個々の匂いを判別することができたそうです。
Imam氏は、このニューロモーフィックチップは、環境モニタリングや有害物質の検出、工場の品質管理作業などに応用が可能だと、インテルのウェブサイトにて語っています。また、特定のにおいを発する一部の病気の診断や、空港のセキュリティで有害物質をより的確に識別できるニューロモーフィックチップを装備したロボットなどの応用も可能になると考えているそうです。