Spotifyは、最も急速に成長している音楽ストリーミングサービスの一角です。今後もその勢いを落とすことはないでしょうが、数あるサービスの中でも、Apple Musicと熾烈な競争を繰り広げています。それぞれのユーザーから「信仰心」を問いかければ回答が分かれるのは理解できます。その一方で、SpotifyとApple Musicには「ある種のオーディオファンにとって価値のあるユニークな違いがある」と米国版SlashGearのBharat Bhushan氏は語ります。今回、SpotifyとApple Musicを比較しながら、いくつかのポイントに絞って詳細に見ていきましょう。
Apple MusicとSpotifyの違い
以前の記事 「音楽ストリーミングサービスを席巻するSpotifyのアクションプラン」の中で説明した通り、Spotifyの躍進が止まりません。たくさんのストリーミングサービスの中で筆頭に位置づけられるSpotify、それに対するApple Musicといった大枠で見ていきましょう。
そもそも私ちは、どうしてストリーミングサービスを利用するのでしょうか。その回答としては、最新の音楽を手元のデバイスで即座に楽しめる点が挙げられるでしょう。そしてApple MusicとSpotifyはどちらも成長著しい楽曲カタログを持っていますが、その違いはユーザーにとってどれだけ便利なやり取りができるかということに集約されます。もちろん、どちらのサービスもプレミアムプランへの門戸を開いていますが、Spotifyは無料で曲をストリーミングできるという柔軟なオプションを提供しています。無料版には広告が表示されますが、プレミアム版にアップグレードしなくても音楽を楽しむことができます。
楽曲数はどうでしょう。Spotifyには7,000万曲以上の楽曲リストがありますが、Apple Musicは7,500万曲を超えています。また、Spotifyでは、Apple IDでサインインしていれば、iTunesライブラリにアクセスしてデバイス間で再生できます。
Spotifyでは、デバイスに保存された音楽をアプリで再生すできますが、クラウドストレージのオプションはありません。これにより一定の制限があります。注目すべきは、どちらのサービスも新しい楽曲がリリースされればどちらも即時にアクセスできる点です。また、Apple Musicでは、特定の限定ミュージックビデオにもアクセスできます。
この点でSpotifiが優位に立つ点はポッドキャストです。フリーパスに加えて、Spotifyは、アプリ内でポッドキャストを提供する唯一のストリーミングサービスです。余談ですが、AppleはPodcastアプリケーションを別途用意しています。しかし、音楽だけを楽しむのであれば、Apple MusicとSpotifyはどちらもAndroidとiOSに対応しており、携帯電話、スマートスピーカー、PC、Macなど、さまざまなデバイスで利用できます。
SpotifyとApple Musicのコストパフォーマンス
SpotifyとApple Musicは、どちらも定額制の音楽ストリーミングサービスです。そのため、どちらも月額980円の料金が発生します。しかし、SpotifyとApple Musicには、サブスクリプションを申し込む前に3ヵ月間の無料トライアルが用意されています。(2021年5月24日現在 | 短期的なキャンペーンとして両サービスから提供)
有料オプションでは、楽曲リストにあるすべての曲を、1日中いつでも再生できます。オフラインで曲を再生するオプションもあるので、インターネットに接続できないエリアにいても問題なし。どちらのサービスでも、サブスクリプション・オプションにはファミリープランと学生プランがあります。学生プランはどちらのサービスでも480円という価格設定ですが、ファミリープランには微妙な違いがあります。Apple Musicのファミリープランは月額1,480円で、Spotifyは同様のサービスを1,580円で提供しています。
前述のように、SpotifyがApple Musicに勝る点は、プレミアム料金なしで楽曲を楽しめる無料プラン(ただし広告付き)にあります。一方でApple Musicを利用するユーザーにとって、唯一の無料オプションとしてBeats1ラジオがあります。Beats1ラジオは、SpotifyやApple Musicで聴けるラジオ局とは別に、Apple Musicでストリーミング再生することができ、本物のDJが監修した番組を聴くことができます。そしてApple Musicでは、iTunesライブラリの曲を聴くこともできます。
これらを総合すると、SpotifyはPodcastというジャンルにおいて頭一つ抜けています。SpotifyのPodcastは、時間の経過とともに目覚ましい発展を遂げているからです。実際、米国ではApple Podcastの月間リスナー数を超えると予想されています。「音楽とポッドキャストを一つの屋根の下に統合する」というアイデアは、Spotifyにとって真に奇跡的なものでした。Spotifyは止まりません。現在、機械学習アルゴリズムを導入し、Spotifyの音楽とポッドキャストの過去の履歴に基づいて曲を提案するというコンセプトを取り入れています。
Apple MusicとSpotifyのストリーミング品質
音質が平凡であっては意味がありません。ここでの評価は、使用している端末やOSに依存しますが、それでもストリーミングサービスは適切な立場にあるべきでしょう。
カタログスペックを見る限りはSpotifyの方が優れているように見えます。ところがApple Musicは近い将来にこの状況を変えようとしています。モバイルやデスクトップでは、Spotifyは最大320KbpsのAACでストリーミングを提供しますが、ウェブで音楽を再生すると256Kbpsになります。無料のストリーミングでは、ビットレートは128kbpsとさらに低くなります。Apple Musicでは、256KbpsのAACファイルがストリーミング配信されますが、今年6月からはロスレスオーディオストリーミングとDolby Atmos空間音声のオプションが追加される予定です。追加料金はかかりません。Apple Musicに機能が追加されれば、まったく新しいレベルのサービスになる可能性があります。
もちろん、Apple Musicがこれらの新機能を提供するようになれば、という話です。今のところの評価としてはSpotifyに分があると考えられます。なお、SpotifyもHiFiロスレス・オーディオ・ストリーミングの導入も計画しています。これによりストリーミング楽曲のビットレートは1,411kbpsにスケールアップされる予定です。
Apple MusicとSpotifyのどちらがより良い体験を提供するか
正確かつフェアに見れば、Apple MusicとSpotifyはどちらもクリーンで使いやすいUIを提供します。Spotifyはダークな色調、そしてApple Musicは爽やかな白を基調としたアプリです。どちらも楽曲を検索したり、ライブラリをナビゲートしたり、ラジオに切り替えたりという、本来の目的をシームレスに行えるように設計されています。
お気に入りの曲を再生する際には、歌詞を表示してカラオケの練習ができるようになっています。曲名を知っていれば、1日のうちのどの時間帯でも好みの音楽を検索することは問題ありません。そうでない場合はどうすればよいでしょう。この点においてSpotifyが有利です。歌詞に基づいて曲を検索できるオプションを備えているからです。
結論、どちらが優れているか
Apple MusicとSpotifyはどちらも優れており、それぞれの特徴があります。例えばどちらのサービスも、ユーザーの好みを理解し、それに合わせておすすめの音楽を提供してくれます。どちらのサービスもユーザーの好みを把握するのに相当な時間がかかりますが、Spotifyの方が具体的なおすすめの音楽を提供する点では優れていると考えられます。
Apple Musicでは、iTunesライブラリとの連携やミックスが可能です。この点、Spotifyは無料のストリーミング・オプションで圧倒的な勝利を収めています。プレミアム料金を支払っても構わないという方は、個人的な好みで決めることになるかもしれませんが、SpotifyはiOSやAndroidプラットフォームの区別なく利用できます。様々なデバイスとの互換性が高いSpotifyがこちらでも優位にあります。
結論、SpotifyはApple Musicより優れていると結論づけられます。ただし、今後どのような巻き返しがあるかは誰にもわかりません。こうした競争がより良いサービスの実現につながるはずです。良い時代です。