将来、電気自動車は走行するだけで充電ができるようになるかもしれません。コーネル大学の研究者であるアフリディ氏が目指すビジョンは画期的です。道路に埋め込まれた特殊な充電帯の上を走行することで、自動車のバッテリーを充電する技術を実現しようとしているのです。走りながらワイヤレス給電です。これが可能であれば、電気自動車の所有者が、充電スタンドを探したり、バッテリーを補充するために駐車する必要がない未来が訪れることでしょう。
電気自動車の充電は大きなテーマ
アフリディ氏は、国全体で電気自動車を普及させようとする場合、インフラに関する多くの課題があると語ります。ガソリン車のドライバーが電気自動車に切り替えるには、たくさんの充電用コンセントが必要になります。やはり国や行政がインフラ面でどのようなサポートを提供するかは、かなり重要なテーマになるでしょう。
同氏によると、一般家庭には電気自動車を急速に充電できるだけの電力がないとみています。こういった状況下で、コーネル大学のチームのがとったアプローチは100年以上前に端を発するものです。ニコラ・テスラが交流電界を利用して、ランプに電力を供給した方法まで遡ります。電場ではなく交流磁場を介して、エネルギーを路面から伝達する独自のバージョンのワイヤレス給電を考えたのです。ただし、彼らが採った手法はすぐに効果がないと明らかになり、アフリディたちは違うアプローチを検討し始めました。彼らが考えたワイヤレス電力伝送は基礎物理学に基づいています。それは宇宙の遥か彼方を旅するボイジャーに電波を使ってメッセージを送るための技術と根っこは変わりません。
電気自動車にワイヤレスで給電する試み
しかし、これまでと大きく違うのは、より多くのエネルギーをより短い距離で移動体に送れるようになる点だと語ります。チームが設計したシステムは、地面に置かれた2枚の絶縁金属板を、マッチングネットワークと高周波インバーターを介して電力線に接続します。これにより振動電界が発生し、車の下側に取り付けられた2枚の金属板の電荷を引き寄せたり、反発させたりします。
このプレートが高周波電流を車内の回路で整流し、整流された電流がバッテリーに充電されるという仕組みになっています。電界の大きなメリットは、直線的で指向性が強い点にあります。そのため、フェライトのような導電材料を必要とせず、より高い周波数で動作させることができるのです。
現在、大きな課題となっているのは、入手しやすい電圧で発生する電界が弱いことです。研究チームは、この弱点を補うために、電圧を上げ、非常に高い周波数で動作させて、大きなレベルの電力伝達を実現しています。現在もシステムの改良が進められています。