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TikTokだけでない米中対立の別論点: QualcommとHuaweiのプロセッサー調達

Huaweiのチップ調達を巡り、米国政府に働きかけがあるかもしれません。今回はQualcommが主役です。HuaweiがQualcomm以外の企業と契約する恐れがあり、それによって莫大な収益機会を逃すであろうと、政策立案者に訴えかけているのです。かつてHuaweiとQualcommは特許ライセンスの利用料を巡って対立し、つい最近になって和解に至った両社ですが、より複雑な様相を帯びています。TikTokの買収に留まらず米中対立では様々なアジェンダが生まれており、本件も注目を集めるトピックとなっています。

QualcommとHuaweiの関係

今回の報道はWSJによるものですが、Huaweiがスマートフォンを製造できなくなるわけではありません。正しくは米国企業から調達した部品でデバイスを製造できなくなる恐れがあるのです。このようになった場合、Huaweiの関連会社のHiSiliconは、Huawei用のKirinプロセッサの製造はほとんど不可能になり、廃業を余儀なくされる恐れもあります。現時点ではHuaweiに残された選択肢は、台湾のMediaTekと韓国のSamsungからプロセッサーを入手する程度でしょう。

HuaweiがQualcomm以外からプロセッサーを調達するというこのシナリオこそ、Qualcommが何がなんでも避けようとしている結末です。Qualcommは米国政府を説得するために政治的影響力を行使するよう動いており、Huaweiへの一部の製品の販売に関する制限を緩和するよう求めています。具体的には、Huaweiの5G電話向けのチップの販売許諾を要求するものと見られていますが、そのリクエストのほとんどは、5Gプレミアム製品ラインに該当します。なお、Qualcommは、既存のライセンスと例外により、現在もHuaweiに他のコンポーネントを提供できるようになっています。

Qualcommの主張と米中対立

Huaweiは、米国だけでなく、米国と関係の深い国々からも、特に5Gに関連するものに関してはますます門を閉ざされている状況です。この状況でQualcommが、Huawei向けのチップを提供できなくなれば、Huaweiは別のルートから仕入れることとなり、本来Qualcommが受け取っていたであろう数十億ドルの収益が競合に渡ってしまうのも道理でしょう。結果としてQualcommは世界のスマートフォンと5G市場で大きな不利益を被ることになると、政策立案者に訴えているのです。

Qualcommの主張は政策へと落とし込まれるのでしょうか。米国内では、昨今の米中対立について完全に足並みが揃っているわけではありません。国家安全保障上の脅威として認識されている中国企業との取引に関して、2つの立場があるのです。Huaweiが最たる例ですが、政府当局と一部の議員は「国家に危害を及ぼす恐れのある」メーカーやサービスベンダーを米国から遮断するべく強硬な主張を展開していました。他方で、米国政府は難しい舵取りを求められており、米国を技術的に不利な立場に置く、あるいは経済的な不利な立場に置いてしまう政策には特に慎重です。今回のQualcommのロビーイングが政府にどのような動きを与えるか注目が集まります。