現在NASAでは、グリーンランドと南極の氷床を、11基の衛星を使って監視しています。これにより、氷床が1990年代のころより6倍も速く溶けていることがわかりました。
融解傾向がこのまま続けば、2100年までの海面上昇は、国連の気候変動に関する政府間パネルが予測した最悪のシナリオと一致することになります。
これは、50組織から集めた89名の極地科学者チームが出した総合評価です。氷床変動に関する調査として、これまでで最も包括的なものと言えるでしょう。
分析には、NASAの地球観測衛星(ICESat)や、NASA‐ドイツ航空宇宙センターの共同ミッション「重力回復と気候実験」の衛星から得たデータを使用しました。その結果、1990年代ではグリーンランドと南極の氷床の喪失が、年間で合わせて810億トンであったのに対し、2010年代には年間4,750億トンと約6倍に増加していると算出されました。
1990年代以降、グリーンランドと南極で合わせて6.4兆トンの氷が失われました。 世界の海面は約1.8センチ上昇し、このうち3分の1は氷床の融解によるものだということです。そして、その60%がグリーンランドの氷床融解、40%が南極の氷床融解によるものだと見られます。
2014年に出された予測で、2100年までに世界の海面水位が約71センチ上昇する可能性があるとされていましたが、今回の調査により、今まさにその路線で進んでいるということが示されました。両方の氷床の喪失は、2010年がピークで合わせて5,520億トンに達し、その後10年間の年間平均が4,750億トンで進んでいます。
氷の喪失の原因は、南極の湾に突き出している氷河が海に溶け出すことで、氷河の流れが加速していることです。グリーンランドでも同じ現象が起きており、グリーンランド氷床の喪失の半分を占めています。残りは気温の上昇が氷床の表面を溶かしていることが原因です。
2019年は、北極圏までをも覆った熱波の影響で記録が更新される懸念があり、チームはさらなる分析が必要だとしています。