米ペンシルバニア州にあるトーマス・ジェファーソン大学の研究で、ハーブや果物の皮に含まれる化合物が、多発性硬化症(MS)と呼ばれる自己免疫疾患によって引き起こされる損傷を予防し、回復させるのに役立つ可能性がある証拠が見つかりました。既存のMS治療は、この疾患の進行を遅らせることができますが、現時点で、ニューロンに生じたダメージを元に戻すことはできません。
治療法の見つからない難病に光
多発性硬化症は、体の免疫システムが神経やニューロンを覆う保護鞘を攻撃し、進行性の痛み、しびれ、筋力低下、視覚障害、記憶喪失などを引き起こす病気です。早期の発見・治療で病気の進行を遅らせることができますが、現時点で治療法はありません。
新たに発表された研究には、ヒトの進行に似た多発性硬化症を発症させてある実験用マウスが含まれていました。これらのマウスの中枢神経系には、この病気に侵され、ダメージを受けており、研究者らはこの実験用マウスの経過を追いました。
これらのマウスでは、発症からおよそ60日目に精製されたウルソール酸による治療が開始されました。これは脊髄および脳にダメージが回る進行期とされています。そして、投与20日目 (発症80日目) に、筋力の麻痺したマウスはまだ筋力低下が残っているものの、再び歩けることがわかりました。
このことは、病気によって引き起こされていたダメージが好転したことを示す証拠だと言えます。さらに研究者らは、ウルソール酸が前駆細胞を活性化し、多発性硬化症患者の免疫系によってミエリン鞘のダメージから守る細胞を形成させる可能性があることを発見しました。これはマウスで観察された回復を説明できるようになります。
共同統括著者のGuang-Xian Zhang博士は次のように説明しています。
「これは治療法ではありませんが、人々に同様の反応が見られれば、生活の質が大きく変化することになります。しかし最も重要なことは、このように疾患の進行した場合、他の薬剤では見られなかった好転反応です。」
しかし、この化合物が高用量で摂取しても安全かどうか、またヒトでもマウスと同じ効果があるかどうかを決定するには、さらなる研究が必要だということです。