レクサス「UX 300e」は、同ブランド初の電気自動車です。しかし、テスラやジャガー、BMWの最新EVとは異なり、UX 300eには空冷式バッテリーが搭載されています。空冷式バッテリーは日産「リーフ」にも採用されていますが、冷却性能は他と比べて高い訳ではありません。レクサスでは10年/100万kmの保証を付けることで、将来のバッテリー劣化の不安軽減を目指しています。
既存のレクサス「UX」をベースに、UX 300eは 54.3kWhのバッテリーを搭載。充電能力は 6.6kW(AC)で、DC急速充電器を使用すると最大 50kWになります。
レクサスによれば、航続距離は NEDCサイクル(新欧州ドライビングサイクル)で約400kmをマークしているとのこと。正直なところ、バッテリーの性能などを考えれば、この航続距離は許容範囲と言えるでしょう。しかし、高性能の水冷式システムと比較すると、空冷式は高電圧の電気自動車、特に温暖な地域においては効率的でも安全でもありません。
広く知られている通り、バッテリーの最大の敵は熱です。効率的な水冷式は、熱による劣化からバッテリーを守るのに有利でしょう。だからこそ、空冷式バッテリーに10年/100万km(いずれか早い方)保証を付けたレクサスには感銘を受けます。レクサスによれば、UX 300eのバッテリー空冷システムは、水冷式のものよりも軽量かつ安全であるとのこと。また、このシステムは車内の空調と連動して、車両性能、充電容量、バッテリー寿命を向上させると謳っています。
さらに、各バッテリーモジュールの下に発熱体を搭載し、氷点下でのバッテリーへの影響を最小限に抑えています。バッテリーを適度に加熱することで、電気モーターに十分な電圧を供給し、厳しい冬の気候の中でも、最初からフルパワーを発揮できるようにしています。気候の変化に富んだ日本ならではの工夫と言えるかもしれません。
UX 300eは昨年11月末に中国でデビューし、今年中に欧州で発売される予定です。どうやら、日本にも2021年に上陸するようです。しかし、レクサスの主戦場である北米には導入されません。日本での販売価格は発表されていないものの、欧州では約45,000ドル(480万円)となっています。
今のところ、レクサスの空冷式バッテリーが水冷式のライバル車に対してどのようなアドバンテージを発揮するのか、何とも言えません。一般的に不利とされる空冷式ですが、手厚い保証を付帯するだけの自信がレクサスにはあるということなのでしょうか。