FT報道:Aston Martinは中国の吉利による投資を検討

業績不振のAston Martin  投資家との交渉進める

欧州での販売不振により、キャッシュフローの問題に直面している英Aston Martin。EVセダン生産計画の中止が伝えられており、投資の可能性について中国の巨大企業吉利(浙江吉利控股集団:ジーリーホールディングスグループ)と交渉中です。イギリスの代表的なスポーツカーメーカーは投資家に対し、2019年の当初の予想を下回る売上高になることを伝えた後、資金調達に動いています。Financial Times紙(イギリスの経済紙。以下FT) が報じました。

雲行きの怪しい Aston Martin。中国企業による買収の可能性が出てきた。

「トレーディングの観点から見ると、2019年は非常に残念な年でした。」Aston Martin Lagonda(同社の正式名称)の社長兼グループCEOであるAndy Palmer氏は、そのように業績不振を認めています。「小売は2007年以来最高の12%の成長を遂げました。しかし、ディーラー在庫が減少したにもかかわらず、当社の基本的な業績は計画した利益を出すことができていません。

2019年は欧州での販売台数が予想を下回ったため、Aston Martinの販売台数は前年比7%減となりました。一方で、同社のラインナップの中で最も手頃な価格の「Vantage」へ販売をシフトしたことにより、平均販売価格も打撃を受けたようです。Aston Martinは、「潜在的な戦略的投資家との話し合い」を進めていることも認めました。

業界を牽引するハイブランドとしては、EVへのシフトが遅すぎたのかもしれない。

吉利が自動車メーカーを救う?

FTによると、その投資家の一つは、すでにVolvoとLotusを買収した中国の自動車メーカー吉利であるとのこと。吉利の車は中国国外ではほとんど知られていませんが、業績不振に陥っていたVolvoを復活させ、高級EVのサブブランドとしてPolestarを確立する取り組みは成功を収めています。

情報筋によると、吉利は現在、投資の可能性についてデューデリジェンスを実施しているようです。また、買収に代わるもう一つの選択肢として、Aston Martinと吉利の技術提携にとどまる可能性も示唆しています。吉利はすでに独Daimlerの株式の10%を保有する筆頭株主で、Daimlerはエンジンとインフォテインメントシステムの技術の一部をAston Martinに供給しています。

FTによれば、買収の可能性があるのは吉利だけではありません。F1億万長者のLawrence Stroll氏(カナダの実業家)も投資を検討しており、Aston Martinのほぼ20%を彼が支配することになるだろうとも言われています。

Hello SUV, goodbye EV

明るいニュースがあるとすれば、それはブランド初のSUV「Aston Martin DBX」への対応です。2019年11月に発表されたこの高級SUVは、「Vantage」「DB11」と同じ4.0LのツインターボV8エンジンを搭載しています。これは、実際にはDaimlerのMercedes-AMGから供給されているエンジンです。「DBX」の価格は約2300万円とし、2020年第2四半期に生産を開始する予定であることを、Palmer氏自身が明かしています。

Aston Martin初となるSUV。メーカーの不振とは裏腹に、ユーザーの期待が集まっている。

DBX発表以降の兆しは非常に明るいものであり、これまで確認している受注率は、当社のこれまでのどのモデルよりもはるかに優れています。発売計画は順調に進行しており、主要なマイルストーンをすべて達成しています。」(同氏)

「DBX」は2019年11月20日に予約が開始され、現在約1,800台の注文を受けています。そのうち最初の500台は限定仕様車となっています。Aston Martinは2022年4月に1億ドルを追加で引き出す予定で、4週間以内にこれを行う予定です。

ただ、ロードマップに載っているほかの車にとっては残念なことに、削減も行われています。Autocar UK(イギリスの自動車雑誌)によると、「Aston Martin Rapide E」(同社のEV4ドアセダン)は内部調査プロジェクトとして残されるようです。2015年に試作車が発表され、2017年に量産化が決定した「Rapide E」は、2019年末に生産を開始する予定でした。

ブランド初の量産EVとなる予定だった「Rapide E」。市販化は暗礁に乗り上げている。

しかし、当初のコンセプトからの道のりは必ずしも順調ではありませんでした。当初この車は中国のEVメーカー Faraday Futureと提携予定だったものの、2017年にはAston Martinが単独で155台を製造することになりました。今では消費者の手には届かなくなってしまいましたが、代わりにAston MartinのサブブランドLagondaの立ち上げを準備している間に、EV技術をさらに発展させるために活用されるようです。

Lagondaはノアの箱舟となりうるか

Lagondaの歴史は古く、設立は1906年にさかのぼります。もとは独自した自動車ブランドでしたが、紆余曲折を経て、第二次大戦後にAston Martinの傘下に入りました。 Lagonda の名が使われていない期間もありましたが、 現在は超高級EVのブランドとして復活しようとしており、その記念すべき一台目にはSUVの投入が予定されています。ただ、生産は早くても2022年までは計画されていません。

いま、 自動車業界は変革の波にさらされています。環境問題や市場の変化など、メーカーを取り巻く状況は決して楽観視できるものではないでしょう。日本も例外ではありません。中国企業の台頭が業界にどのような影響をもたらすのか、注視する必要があります。

歴史と伝統のあるスポーツカーメーカーが、存続をかけてどのような道を歩むのか。自動車ファンの端くれとして、幸運を祈らずにはいられません。

高級EVのサブブランドとして立ち上げ準備中のLagonda。Aston Martinを救う方舟となれるか。

林 汰久也

愛知県在住29歳/ハウスメーカーの営業を経て、IT系ベンチャーのメディア事業に参画。2020年よりフリーのライターとして活動開始/愛車遍歴:マツダ『RX-8』⇒シトロエン『C4』⇒スバル『フォレスター』&ホンダ『クロスカブ50』/ゲームはPS派だが、最近ゲーミングPCが欲しいと思っている。

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