トヨタは、COVID-19の患者用に特別な搬送車を開発し、高い感染力に考慮した搬送を実現しました。この車両は、国内の医療機関からの要望に基づき、昭和大学病院向けに開発されたもので、さまざまな機能を備えています。
ベースとなっているのは、トヨタの商用バン「ハイエース」。貨物車として販売されているだけでなく、ミニバンやタクシー、広々とした送迎車、キャンピングカーとしても使用されるなど、その柔軟性はすでに実証済みです。また、高規格救急車仕様の「ハイメディック」は国内最大シェアを誇ります。
今回作られた昭和大学病院向けの搬送車は、従来の救急車とは焦点が異なります。トヨタによれば、コロナウイルスは空気中の飛沫によって感染しやすいことから、「飛沫循環抑制車両」を作ることを第一の目的としていたとのこと。コロナウイルスは、症状が出るまでに2日間ありますが、その間に他の人に感染する可能性があるため、深刻な問題の1つとなっています。
トヨタの生み出した解決策は、車内に隔壁(バリア)を設けることで、空間を2つに分離するというものでした。運転席と助手席のある前部は、隔壁により後部から隔離されており、排気ファンが後部空間の空気を連続的に外部へ排出。これにより、後部の空気が前部へ循環するのを防ぐことができます。
もちろん、COVID-19の重症患者のために作られた装備はこれだけではありません。ストレッチャー(車輪付き担架)用の電動リフトも備わり、簡単に乗降できるようになっています。車内の広さは既存のハイエースと変わりませんが、医療従事者用の座席や、必要な医療機器を設置するスペースは確保されています。
トヨタは、「同グループが医療機関や自治体などに提供している軽症患者用の搬送車11台に、今回提供する重症患者用の車両が加わりました」としています。しかし、より重症化した患者を対象としたのは今回が初めてです。
自動車だけではありません。トヨタ傘下のアイシン精機は、簡易ベッドフレームと簡易パーティションの生産を今月から開始すると発表しました。これらはパンデミック中に開設された救急医療施設などで使用されます。
また、トヨタは先日、コロナウイルスへの対応に重点を置いたプロジェクトについて、特許や著作権などの知的財産を無償で開放すると発表しました。トヨタのほか、キャノンをはじめとする約20社が同様の特許無償開放を行います。同社は声明の中で「我々は、診断・予防・封じ込め・治療といったCOVID-19の拡散阻止を目的とした活動に対して、この危機的状況の間、いかなる特許、実用新案、意匠、著作権も主張しないことを、補償を求めることなく、ここに宣言します」と述べています。