SlashGear Japan

航続距離640km以上! Teslaの座を脅かすスタートアップが開発中のEV「Lucid Air」

Lucid Motors(ルーシッドモーターズ)は米・カリフォルニア州に拠点を置く新進気鋭のEVメーカーで、かのTeslaをはじめとする世界中の自動車メーカーから多くの人材が集まっているスタートアップです。Lucidは現在「Air(エア)」というEVの開発を進めており、実現すれば同社初の市販EVモデルとなります。この新しい電動セダンのベータテストによると、市販化実現に向けて大きく前進していることが確認できます。当初謳われていたような、今年中に生産に入ることは期待できないものの、その400マイル(約640km)以上とされる航続距離には注目が集まりそうです。

Lucidのチームは2日、バッテリーパックと電動パワートレインの公道テストの一環として、ベータ車両の1台が実際に走行している映像を公開しました。映像の収録は去る2月にカリフォルニアで行われたとLucidは伝えています。

Lucidは当初からAirの航続距離を約400マイルと謳ってきましたが、他のEVメーカーの開発状況から見るに、そのような長距離を実現するのは難易度が極めて高いでしょう。実際のところ、EVが1回の充電でどこまで走れるかというのは、道路の状況や運転スタイル、天候といったあらゆる条件に左右されます。

ところがLucid Airは、サンフランシスコ・ベイエリアからロサンゼルスにかけて、400マイル以上の距離を1回の充電で走破し、帰りも再び1回の充電だけで戻ったといいます。このルートには、高速道路のほか、ロサンゼルス郊外の峠を4,414フィート(約1,300m)登るといった高低差も含まれます。

とは言っても、市販化してユーザーの手元に届くまで(まだ先の話ですが)、実生活における航続距離がどうなるかは分かりません。米国の燃費・電費基準であるEPAの数値は、実際の性能と大きな差があることが次第に明らかになってきています。すでにデリバリーが開始されているPorsche「Taycan」も、EPAの201マイルという航続距離評価をはるかに上回る性能を見せています。

この差は、EVだけでなく、あらゆる車を公平に比較するために標準化されたテストプロセスに起因すると思われます。欧州の自動車と米国の自動車を比較するときも注意が必要で、EPAと欧州の基準であるWLTPの間にも大きな違いがあります。後者で好成績を出したとしても、前者では必然的に悪い結果になります。

Lucid Motorsは航続距離を大きな看板に掲げて開発を進めていますが、最終的には、バッテリーパックのサイズによってAirの性能が決まるといっても過言ではないでしょう。誰もが1回の充電で400マイル以上走れる高級EVを必要としているわけではありませんし、誰もがそれを購入できるわけでもありません。それでも、Tesla「Model S」やPorsche Tycanなどに対抗しようとしている自動車メーカーとしては必要な取り組みなのでしょう。