日産のベストセラーをベースにしたスポーツ仕様 ノートe-POWER NISMO S 試乗 レビュー

今回は「ノートe-POWER NISMO S」 にスポットを当てたいけど、その前には、ベース車となるノートe-POWERのそもそもの人気の秘訣に迫りたいと思う。

ノートは日産初の販売台数1位

日産ノートは2018年度の登録車販売台数第1位を獲得した人気者。1年で13万台以上を記録し、大ヒットになった。実は同社にとって、この1位の記録は初めてだという。

現行型ノートは、2012年に登場したモデルだ。2016年末には、マイナーチェンジがリリースされたけど、ガソリン仕様と新しく加わった革新的なノートe-POWER仕様の2種類体制。正直なところ、1位が獲れた理由はe-POWER仕様の人気のおかげだ。

登場した2仕様体制の人気モデルだ。1つはガソリン車、もう1つはe-POWER仕様。しかし、その75%弱のシェアを占めているのは、e-POWER仕様。e-POWERの人気の理由は?まず電気自動車とは違って、同車だと電欠を心配しないで乗っていられる一石二鳥のパワートレーンを採用していること。車内のエンジンでバッテリーを充電できるし、加速性は2Lターボ車並みだ。またワンペダルで運転できるし、手頃な価格だ。

赤いアクセントはNISMO独特のカラー。
Photo by Peter Lyon

そもそも e-POWERとはどういう仕組みなのか?

ノートe-POWERは電気自動車(EV)でもないし、ハイブリッドでもない。その中間のもの、あるいは、それらを足して2で割ったようなものと言って良いだろう。これまでのハイブリッド車はガソリン・エンジンと電気モーターの出力をブレンドするものが多かったが、日産「e-POWER」は、109psを発揮する1.2Lのガソリンエンジンを発電機の役割とし、駆動は電気モーターだけで行なうというシステムなのが特徴だ。つまり、エンジン付きEVと言っても良いだろう。これは、システムとしてはシリーズ式のハイブリッドだけれど、モーターだけで前輪を駆動させて走る感覚はEVと変わらない。

当然、バッテリーを充電するために自動的にかかるエンジンはその静けさを邪魔するけど、発電機としてこのエンジンが搭載されたおかげで航続距離がしっかりあるからこそ、ノートはそれだけ売れた。

また、EVのように、回生ブレーキが非常に良く効くので、少し慣れればアクセルペダルのオン・オフだけで運転できる。詳しく説明すれば、ノートe-POWERの走行モードを 「S」か「ECO」モードにスイッチすると、アクセルを戻すことによって減速も調整できる。 これが「e-POWER Drive」と言って、足を踏み変えることなく停止状態までコントロールできるワンペダルの運転だ。

リアウィングとディフューザーは不可欠なエアロパーツ
Photo by Peter Lyon

ノートe-POWER NISMO S 試乗

さて、最新の「ノートe-POWER NISMO S」に乗り換えよう。NISMO仕様はベース車のノートe-POWERと比べて、まず気づくのは、よりパワフルであることと、引き締まったハンドリングだ。109psと最大トルクの254Nmを発生するノートe-POWERに対して、NISMO Sは136psと320Nmにパワーアップしている。パワーとトルクが約25%ほど上がっているのに対して、燃費は驚異的な37km/L(日本のJC08モード)を保っているところは、e-POWERの強みだ。

走りはどうだ? ノートe-Power NISMO Sは、パワーアップさせるためにコンピューターを専用チューニングし、ボディー剛性を強化し、NISMOのエンジニアたちがサスペンションを特別にチューニングすると同時に、電動パワステも専用チューニングを加えている。わりとタイトなコーナーを攻めても、ボディーがフラットな姿勢を保ちながら、クルマはねじれないし、歪まない。本当に4つのタイヤがちゃんとグリップして働いているという感じだ。コーナーの出口から立ち上がる時の加速は、多少ホイールスピンをするほどのトルクがあって、しかもトランスミッション不要のモーターならではの加速性は優秀

赤いアクセントは内装まで。
Photo by Peter Lyon

ワンペダルで運転できる「eペダル」

先ほど急なブレーキと書いたけど、このノートe-Power NISMO Sの「eペダル」というアクセルペダル特有の踏み方を一回覚えれば、ブレーキを踏まないで、アクセルだけでコーナリングができるようになる。つまり、アクセルを戻せばブレーキペダルを踏まなくてもクルマはちゃんと減速するから、ペダルを踏みかえずに運転することができるワンペダル走行だ。

とにかく加速性は良い。発進時から一気に最大トルクを発生するモーター特有の優れた瞬発力によって、EVと同じ加速を体感できる。さらに市街地や高速道路での走行中でも、アクセルの踏み増しに対するレスポンスは鋭いので、俊敏なアクセルワークに意のままに楽しめる。

NISMOのスペシャリストが作った さすがの走り

でも、不思議なことに、乗り心地は犠牲になっていない。ちゃんと路面の凸凹をしっかりと吸収して、ロードノイズはほとんど室内に伝えない。さすが、レースカーを作るNISMOのスペシャリストた! やはり、ボディ剛性がしっかりしているからこそ、緊急ブレーキでも、クルマはほとんどピッチングをしない。

NISMOの味付けをふんだんに使用した室内
Photo courtesy Nissan

コクピットのデザインは標準モデルとあまり変わらないけど、エアコンの吹き出し口やシフトベースなどには、赤いアクセントをふんだんに使われている。ヘッドレスト一体型のシートバックを採用する2色のレカロ製シートはスポーツ走行をイメージさせる。この程度のドレスアップはちょうど良いと思ったけど、少しやりすぎと思う人もいるだろう。

さあ、ライバルと比較してどうなのか。正直なところ、e-POWERの仕組みは日産独特のパワーシステムなので、比較するのは難しいけど、あえて言うなら、トヨタ・プリウスPHV(プラグイン・ハイブリッド)と比べよう。例えば、NISMO Sとトヨタ・プリウスPHVを比べた場合、燃費は全く同じ37km/Lでも、NISMO Sの瞬発力は強いし、ハンドリングも引き締まっているので、運転すること次第がより楽しい。または、NISMO Sフルスペックのルックスも格好いいし、350万円という価格に対して、プリウスPHVは20万円高い。そう考えると、僕なら、e-POWER NISMO Sにしようかな。

ここがいい

*2Lターボ並みの加速は速くて静か

*燃費はいい

*引き締まった走りはスポーティ

ここはもう少し

*ガソリンエンジンがかかるとEVの静けさを邪魔する

*シートの赤いアクセントは人によって強すぎる

ピーター ライオン

1988年より日本を拠点に活動するモーター・ジャーナリスト。英語と日本語で書く氏 は、今まで(米)カー&ドライバー、(米)フォーブス、(日)フォーブス・ジャパン 、(英)オートカーなど数多い国内外の媒体に寄稿してきた。日本COTY選考委員。ワー ルド・カー・アワード会長。AJAJ会員。著作「サンキューハザードは世界の’愛’言葉 」(JAF出版、2014年)。2015から3年間、NHK国際放送の自動車番組「SAMURAI WHEELS」の司会を務める。スラッシュギアジャパンでは自動車関連の記事・編集を担当し、動 画コンテンツの制作に参画する

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