ポルシェSUV 新型マカンSは買いか?:世界最速実車レビュー

近年はポルシェも、マニアが買い求めるスポーツカーよりSUVでブランド経営を下支えしている、というのをご存じの人も多いでしょう。

カイエンやマカンといったモデルは、「ポルシェに乗る」ことやポルシェの「エンブレム」を求める消費者に確実に受け入れられてきました。しかし、これ以上の実用性、例えばケイマン以上の実用性が必要でしょうか?『これはもうスポーツカーじゃないよ』と言う人も、マカンSにしばらく乗ってみると、『スポーツカーに足りないのはこれだったのかな』と思うかもしれません。

ポルシェのSUVモデル2車のうち、小ぶりなマカンの方が常にいいルックスを保ってきましたが、最近のお色直しで少し変わりました。いわゆるマカンのディテールが減り、911のようにトランクに一筋のテールライトが追加されました。

2020新型マカンS

とは言っても、ポルシェならではのスタイルは残されており、そのために若干妥協が必要だったようです。カーゴスペースや後部座席の天井の高さを重視するバイヤーには、マカンSの「斜めルーフ形状」はどうしても気になるでしょう。車内は、すごく窮屈というわけではありませんが、5人乗りではなく「大人4人が楽に乗れる」という仕様です。後部のセンター座席は狭く、トランクはたった0.5立方メートルしかありません。

新しくなった3リットルV6エンジン

新型マカンSのリヤスタイル

実は、新マカンSのパワーは、ボンネットの下に隠されています。古びた「V6ツインターボ」に取って代わり、新型の「3.0リットルV6シングルターボチャージャー」が鎮座しています。シングルと言われて『パワーが減ったのでは?』と思うかもしれませんが、実はその反対で、348馬力、 最大トルクが480Nmに上がっています。

それより大事なのは、ターボ数が減ることで全体が軽くなったことです。ひとつしかないので、エンジンシリンダーの「V」ゾーンにすっきり納まります。コンパクトなレイアウトのおかげで、踏み込んでからエンジンがスプールアップするまでの「間」が縮まりました。

新マカンSは以前に比べて、最大トルクへの到達時間が1,360 rpmと少し早くなりました。7速PDKトランスミッションによる迅速なシフト、常時4WDにより、もどかしい思いをさせません。停止状態から時速60マイル(約96.6km/h)への加速に要するのは5.1秒。これはもちろん、オプションで1,360ドルの「スポーツクロノ パッケージ」を付けなかった場合で、付ければ4.9秒となります。4.9秒と言えば、マカンGTSに遅れること、わずか100分の2秒です。

スポーツクロノパッケージ

速さと乗り心地の両立

速いだけではありません。どれほど乗り易いクロスオーバーか、ということがポイントです。ポルシェがSUVに参入したばかりの頃、ポルシェ純粋主義者にとっての懸念は、クーペの動力学が、『大きくて内装フカフカの5人乗りの車』には通用しないだろうということでした。長年経って、その恐怖は根拠のないものだったということが証明されています。マカンSは、大多数の車よりも優れていると言えるでしょう。

私の試乗車には、当然のごとく1,360ドルのオプション「ポルシェ アクティブサスペンション マネージメント(PASM)」システムが付いていたわけですが、これは、ドライブモードに応じてダンピング剛性の調節をしてくれます。このアップグレードは欠かせないな、と思いました。高いシートポジションを無視すれば、あたかもケイマンに乗っているかのような、もしくはそれに十分近い気分に浸れるでしょう(この場合、お子さんやペットにはお家で留守番してもらうのが賢明ですね)。

とにかく、他のクロスオーバーにはない楽しさです。「スポーツ」「スポーツプラス」モードを使えば、ぐっと踏み込んだときにPDKトランスミッションの遅れを感じません。ハンドル中央にきれいに並んだドライブモードノブ(スポーツクロノ パッケージの一部)のボタンを押して、パフォーマンス最大設定を20秒間ロック解除。思いのほか手ごわい道路にさしかかったときや、追い越しのチャンスを捉えるのにちょうど十分な時間です。 

ポルシェの落ち着きのある黒いインテリアは、単純にドライバーをいい気分にさせてくれる仕様です。中央コンソールにはたくさんのボタンが散りばめられていますが、これを無意識に操作できるようになるまでには、少し時間がかかるかもしれません。 

操作ボタンが並ぶコンソール

また、何より際立っているのが、ポルシェの新しいPCMインフォテイメントシステム。10.9インチのタッチスクリーンに並ぶ、一連のショートカットキー。パッと見は複雑に見えるかもしれませんが、よく使う機能を見やすいサイズに変更してホームに並べることが可能です。レスポンスは速く、$3,110のプレミアムパッケージの一部としてApple CarPlayをサポートしていることは言うまでもありません(Android Autoは非サポート、ワイヤレスではありません)。また、この中にはシートヒーター(フロントおよびリア)と、LEDヘッドライト、自動防眩ミラーが含まれます。CarPlayだけにするなら$360です。 

PCMインフォテイメントシステム

オプションはおいくら?

こうして並べ上げたマカンSの魅力も、価格をチェックし始めると少し冷めて見えるでしょうか。ベース価格が$58,600(プラス納車費用 $1,250)ですが、数あるオプションリストから選んでいくうちに、数字が跳ね上がります。スポーツテールパイプ、ステアリングホイールヒーター20インチホイール、サファイヤブルーのメタリック塗装、スポーツクロノ パッケージなどをつけて、最終価格は$70,990。抑え気味でもこれくらいです。

その他、次のようなオプションが。ポルシェならではのエアサスペンション システム($2,750)、アクティブ エグゾースト($2,930)、プレミアムパッケージ プラス($6,230)。さらに、シートベンチレーション (フロント)、パノラマルーフ、BOSEサラウンドサウンドシステム、キーレスエントリー、レギュラー プレミアムパッケージ等々。内装オプションのリストも膨大で、一番高価なのはエスプレッソカラーの天然皮革($4,920)、パーソナル カーボンドアシルガード(発光式)($3,200)など。

抑制がものを言う場面です。私が選ぶとすれば、インテリアはスタンダードのまま、その分、スポーツクロノ パッケージ、プレミアムパッケージ、PASMダンパーを付けるだろうと思います。20インチホイールを選べば、粗い路面で同乗者に若干の快適さをもたらしてくれるかもしれませんが、標準19インチにしておくことで、私の手元に$3,140残るわけです。 

なお、レーン キーピング アシスト($700)、360度パーキングカメラ($1,200)、アダプティブ クルーズ コントロール($1,170)、レーン チェンジ アシスト($700)をつけずにこのお値段。

※日本の場合は標準装備に以下が含まれます:パークアシスト(フロントおよびリア)、サラウンドビューカメラ付き、レーン チェンジ アシスト、アダプティブ クルーズ コントロール

それから、サーフェス コーテッド ブレーキ(PSCB:$3,490)、トルク ベクタリング プラス(PTV Plus:$1,500)。この2つは、むしろマカンGTSやターボ向けだと思うのでパスでいいでしょう。マカンSは標準ブレーキで十分だと思うからです。

ズバリ、新型マカンSは買いか?

そもそも、ポルシェディーラーに足を運ぼうと思う人は、ポルシェが財布に優しいとは考えていないでしょうし、価格など問題ではない人も中にはいるでしょう。マカンを選ぶ時の理由は、クロスオーバーの中で一番安いからとか、使い勝手がいいから、とかそういうものではありませんから。他のコンパクトSUVからは得られない、『根本的に満足できる車に乗るんだ』という期待に対して払う価格です。

各種あるモデル、長いオプションリストを見るにつけ、 マカンSはちょうどいい位置にあると、私は思います。十分パワフルで、魅力的で、手頃な価格で、単純に、十分楽しめる車。 ポルシェのスポーツSUVを選ぶ理由が、ここにあります。ズバリ新型マカンSは買いです。

※標準装備、オプション内容や価格は北米の情報です。 日本の情報はポルシェジャパンHPなどでご確認ください。

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