ホンダが北米市場で唯一販売している電気自動車(EV)の生産を終了すると発表しました。2017年に発表された「Clarity EV(クラリティEV)」は、水素で走る「Clarity Fuel Cell」や、電気モーターとエンジンを組み合わせて航続距離を向上させる「Clarity Plug-In Hybrid」と並んで、北米ホンダのグリーンモデルのひとつです。
しかし、Clarity EVは3モデルの中で最も魅力が少ないように見えます。2017年のニューヨーク国際オートショーで発表されたときでさえ、89マイル(約143km)という短い航続距離に対して期待を抱いた人は多くないはず。さまざまなEVモデルが登場する今日、それは明らかに劣っていると言わざるを得ません。
一方、Clarity Plug-In HybridのEVモードの航続距離はわずか47マイル(約75km)ですが、必要に応じてエンジンが作動することで340マイル(約547km)の走行が可能です。また、Clarity Fuel Cellは、水素を動力とするニッチな燃料電池車(FCV)になるはずでした。このFCVはカリフォルニア州でリースとしてのみ展開されましたが、その360マイル(約579km)に及ぶ航続距離は、主に水素燃料ステーションの不足によって制限されています。
ホンダのデザインも物議を醸しました。インテリアにおいては、Clarityシリーズは他の車よりも一段上で、高級感のある上質な素材を使用しています。しかし、外から見ると、このスタイリングは好き嫌いが分かれるでしょう。初代「Insight(インサイト)」を彷彿とさせる、部分的に覆われた後輪のデザインは特に賛否両論があります。
現在、Clarity EVは、カリフォルニア州とオレゴン州でリース販売されていますが、今年中に販売を終了することが確認されました。他の2つのClarityはラインナップに残ります。
EVの形をした穴が開いている北米ホンダ
このため、北米では完全電気自動車のラインアップがなくなってしまいます。同社は「次世代の電動モデルの開発に注力しています。」と語りました。この次世代モデルには「魅力的な新型電気自動車」が含まれているようです。
どのような外観になるのか、またどのような価格になるのかは、まだ不明です。ホンダは先日、小型の電動ハッチバック「ホンダe」で潜在的なEVドライバーを魅了しました。しかし、この車は北米市場には持ち込まれません。ホンダは、米国人にはサイズが小さすぎ、Chevrolet「Bolt EV」やTesla「Model3」に対抗するには価格が高すぎると判断したようです。
新たな北米向けEVが登場するまでの間、ハイブリッド車がEVに代わってホンダの主力商品になると思われます。Clarity Plug-In Hybridは、より安価な「Insight」や「Accord Hybrid(アコードハイブリッド)」とともに提供されています。両モデルともに“普遍性”に力を入れており、従来のガソリン車のラインナップと近い外観と運転感覚を有します。
まもなく登場する「CR-V Hybrid」は、北米ホンダのベストセラークロスオーバーにおける最初の電動モデルとなります。価格は27,750ドル(約294万円)からで、2.0LのVTECエンジンと電気モーターを2つ―1つはエンジン始動用、もう1つは駆動用―を組み合わせて合計212馬力を発揮します。
北米でもハイブリッド車の需要は確かにあるものの、GMやBMWといった競合他社が続々とEVを発表している今、ホンダに残された時間は多くないのかもしれません。