BMW「i8」の話をしよう:この特異なスーパーカーに敬意を表して

BMWは、過去10年間で最も誤解されていると言われる「i8」の幕を閉じようとしています。BMWがこの決断を下すまでに長い時間を要したことには驚きませんが、それでもやはり予想外に悲しい気分に襲われます。この特別なプラグインハイブリッド・スーパーカーの生産は、今年の4月で終了します。

6年間にわたる生産の後、モデルチェンジもなくラインナップから消えてしまうi8。ゴージャスなガルウィング(正確にはバタフライドア)を持ち上げて、その広いドアシルをまたいで乗り込むと、周りの注目を引かずにはいられません。

環境に優しい「スーパーカー」?

魅惑的なライン、うっとりするような切れ込みの入ったボディワーク。これらはコンセプトカーをそのまま現実に近づけたようなもので、他に同じようなモデルはおそらくLexus「LC500」くらいではないでしょうか。しかし、細かくチェックしてみると、見た目ほどエレガントでない部分も見受けられます。インテリアは少しプラスチッキーに感じられ、2+2の後部座席はちょっとした荷物を置くための棚以上のものではありませんでした。そしてバッテリー駆動の航続距離もわずかです。

そもそも、排気量シリンダー数を全体的な魅力と結びつけるスポーツカーファンにとって、i8はやや受け入れがたいものだったはず。McLarenやPorscheなど、並みいる強豪に対抗するためのビジュアルを備えてはいましたが、エンジンはわずか3気筒の直列、排気量も1.5Lと、その見た目にそぐわない小型のユニットでした。

「ハイブリッド」がもはや「環境に優しい」とイコールでは結びつかなくなった今日、瞬間的な大トルクとラグのない加速感を味えるスポーツ目的のハイブリッド車は続々と登場しています。それでも、i8の1.5L 直列3気筒ターボエンジンは、ホンダ「NSX」のような他のハイブリッド車に比べると小さく思えてしまいます。

その点に関する人々の疑問こそ、i8にまとわりついた永遠の課題なのかもしれません。i8は一見、500馬力以上を発揮するロケットのようにも見えますが、3分の1の価格で買えるBMW「440i」と大差ないパワー(374馬力)だということを考えると、イメージとの落差はどうしても生じます。

発売以来2万台が販売され、BMWはi8を「このカテゴリーで最も成功したモデル」としていますが、実際にこの車を運転した人は少ないと言っても過言ではありません。i8のクーペとロードスターを両方とも体験したジャーナリスト曰く、他にはない独特の魅力を持っているものの、論理的に説明するのが難しいといいます。

他のスポーツカーはパワーがあるか、価格が安いか、あるいはその両方です。1馬力につき1ドルを支払うことで、より良いパフォーマンスが得られます。374馬力のi8を「スーパーカー」と表現してよいのかどうか、たびたび議論の対象になることもありますよね。

数字からは読み取れない魅力

もっとまともで、もっと良い選択肢があることは否定しません。一般的に価格だけを考えるなら、i8が最初に検討リストに入るのは難しいでしょう。しかし、単に数字が紙の上に並んでいるからといって、本当の価値を割り引くことはできません。価格だけで白黒を判断するのは、自動車業界をつまらなくさせる要因のひとつです。

i8を運転すると、価格表からは分からない魅力を感じることができるはずです。エンジンは後輪にパワーを集中させ、モーターは前輪を駆動させます。2つの車軸が機械的に接続されていないAWDは今では一般的になっていますが、i8が登場した当時はまだ珍しい機構でした。

このAWDシステムと軽量ボディの組み合わせによって、曲がりくねった道でも機敏な動きを見せます。スポーツモードでは、スピーカーから疑似的なエンジンサウンドが発せられ、「ブーン」という音が聞こえてきます。人工的な音に興ざめする人もいるかもしれませんが、不思議なことに違和感なく楽しめます。

発売以来、BMWのエンジニアたちは何度も微調整を行ってきました。大きな変更はありませんでしたが、アンチロールバーが改善された他、バッテリー容量が増え、アンダーステアも減りました。高剛性のカーボン製モノコック(正確にはモノコックではなく、シャシーとボディは別体)は、アクティブなダンパー制御のおかげで舗装状態の悪い路面からも不快な振動を拾うことがありません。

スポーツカーではしばしば乗り心地の悪さがネックになりますが、i8は快適な車と言えるでしょう。低めのパフォーマンスと引き換えに、少々手荒な運転にも耐えうるよう作られているのではないか、とも思います。McLaren「720S」の驚くべき日常走行性が実証されているように、BMWもi8に実用性(モーター駆動と静粛性によるもの)を持たせようとしています。

i8の存在価値とは

BMWが6年もの間生産を続けているということは、たとえ車自体が遊び心に満ちていたとしても、メーカーとして真剣に取り組んできた姿勢の表れでもあります。とはいえ、i8(および弟分のi3)に関する最大の疑問は、BMWが常に「i」ブランドのモデルを他のラインナップと距離を置いて販売することにこだわっているように見える点でしょう。

「i8」と「i3」はどちらも、電動化構想の先駆けとなるモデルです。際立ったデザインから、ドライブトレイン、インテリアの素材や質感、そして「ドライバーがどのように感じるか」という核心的な部分に至るまで、実験的なアイデアがぎっしり詰まっています。

しかし、売上の本筋である他のラインナップを見る限り、そうしたリベラルな要素は含まれていません。もちろん、BMWには「3」シリーズや「5」シリーズ、その他のモデルでも有能なハイブリッドバージョンが複数用意されています。しかし、こうしたモデルも完全な電気自動車にはまだ遠く、スタイリングや運転中の感覚などあらゆる要素を含めて、まるで既存の顧客が離れることを恐れているかのようでした。

今になってようやく、状況は変わりつつあるようです。これから登場するBMW「i4」のような車は、ラインナップが“両極化”していることの表れでもありますが、それは良いことだと思います。市場は絶え間なく動き、消費者の嗜好も常に変化しています。

では、BMW i8には今後どのような価値を見出されるのでしょうか。「先駆者」、未来における「古典」、もしくは「高価な愚行」。将来、i8に何らかの肩書きが付くとしたら、おそらく3つのうちのどれかでしょう。完璧ではありませんが、非常に興味深い、面白い車でした。

グッバイ、i8。いつかまた君に会える日を願って。

林 汰久也

愛知県在住 28歳。ハウスメーカーの営業を経て、ITベンチャー企業のメディア事業に参画。現在は退職し、フリーのライターとして活動中。マツダRX-8、シトロエンC4を乗り継ぎ、現在は2010年式スバル フォレスターに落ち着く。

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