世界で人気のホンダ・フィット  2モーター搭載の新型のすごい進化

おそらくあなたにも、ホンダ・フィットに乗っている友人がいると思う。それだけ人気のクルマなのだ。2001年に登場して2013年までに、全世界で累積販売台数がなんと500万台を超えていた。しかも、2012年までにはすでに、日本、中国、ブラジルを含めて12か国で生産していた。そして今、誕生したばかりの4代目フィットが2種類の全く新しい外観デザインと、2モーター・ハイブリッドでの登場で再び市場に大きなインパクトを与えようとしている。

でも、新型車をチェックする前に、そもそもフィットは何でそんなに人気が出たかを振り返ってみよう。まずは、全席床下に燃料タンクを収めるセンタータンク・レイアウトを採用したシャシーが画期的だった。そのおかげでフルフラット・フロアとハイルーフを可能にし、クラス・トップレベルの室内空間が可能になった。また、初代の1.2L、 1.3L、1.5L VTECのエンジン・ラインアップそれぞれの性能と燃費性が国内外で高く評価され、ハンドリングもクラス・トップレベルだった。主な市場であるアメリカでは、フィットの実用性、ルックス、コストパフォーマンス、信頼性も高く評価された。


もちろん、センタータンク・レイアウトをそのまま引き継いで、5ナンバーサイズを守った。

フィットは国内外で数々の賞をゲット

実は、初代は2001ー2002年に日本カー・オブ・ザ・イヤー賞 (日本COTY) を受賞したし、2002年には日本国内での年間販売台数で33年間トップを守り続けたトヨタ・カローラを抜いて1位を獲得した。2代目も、日本の最優秀車賞 (日本COTY) をゲットしたし、2007年から2013年まで(米)カー&ドライバー誌の「10ベスト」にランクインされているし、2006年に(英)トップギアの「ベスト・スモールカー賞」を獲った。

さて、新型フィットはどんなクルマ? もちろん、センタータンク・レイアウトをそのまま引き継いで、5ナンバーサイズを守った。また、FFや4WD仕様が用意されている。正直なところ、かなりのキープ・コンセプトと言える。今回、5つのタイプ(BASIC, HOME, NESS, LUXE, CROSSTAR)が用意されており、パワートレーンは2モーター・ハイブリッドの「e:HEV」と1.3Lガソリン・エンジン仕様の2種類。


メタリック・ライム・グリーン色のアクセントがついたグレー色のフィットは新鮮だった

新スタイリングは折り紙感覚のボンネットを採用

僕が乗ってみたのは、ハイブリッド仕様のNESSとCROSSTARの2タイプ。NESS仕様は旧型を一新して、折り紙感覚でボンネット部分がグリルに被さった優しい感じになっている。もともと女性ユーザーも多いフィットには、こんなデザインはぴったりだろう。また、外観のカラーのコンビネーションも冒険しており、例えば非常に映えるメタリック・ライム・グリーン色のアクセントがついたグレー色のフィットは新鮮だった。内装のシートやインパネも同色でマッチングしているところがお洒落。

いっぽう、よりアクティブなライフスタイルを求めるユーザーのためのCROSSTARは、SUVのブームに答えた頑丈なスタイリングになっており、グリルも普通のオープンタイプになっている。

新型フィットの運転席に座ってみると、まず気づくのは、キャビンの開放感とAピラー周りの視認性の良さだ。まるでワンランク上の広さのような感覚だ。細くなったAピラーは衝突吸収を一本後ろの「サブAピラー」に任せることが大きな進歩と言える。シートのクッションが硬すぎず柔らかすぎず、座り心地が優れている。


ドライバーがもっと加速したい時に、発電用のモーターを作動させ、その電気で走行用モーターを動かすことになる。

新型フィットの目玉は2モーター・ハイブリッド

さて、話題のe:HEVというハイブリッドはどうなのか。比較できるように、まずは、1.3Lの(ハイブリッド無しの)ガソリン仕様に乗った。街乗りには十分なパワーを持つガソリン仕様は、一番手頃なプライスだ。

その直後、e:HEVのNESSに乗り換えると、全く別物。やはり、2モーター・ハイブリッドのおかげで、とても滑らかでパワフルな加速が目立つ。走行用と発電用の2つのモーターを持つこのシステムを、e:HEVと呼ぶ。やはり、これまでにホンダが使っていた「i-MMD(インテリジェント・マルチモード・ドライブ)」は複雑すぎたそうだ。今回の大きな進化は、2つのモーターなどの部品の小型化で、1.5Lのエンジンと同様にボンネット下に収納することに成功したことだ。

試乗会会場となったのは、千葉県の一般道だけど、通常の走行では、最高出力109PSの走行用のモーターが前輪を駆動。3000回転まで12kgmの最大トルクを発揮するこのモーターは、発進時からパワフルで、しかも加速性が滑らかで静かだ。ドライバーがもっと加速したい時に、発電用のモーターを作動させ、その電気で走行用モーターを動かすことになる。

この新2モーター・ハブリッド・システムは無段変速機CVTと組み合わせているが、アクセルをベタ踏みしても、エンジンの回転がそれほど高まらない制御になっており、違和感のない加速性は素晴らしい。実は今回、CVTの変速が旧型よりスムーズというより、まるで普通のA/Tが変速するような感覚に仕上がっているのに感心した。この技術なら、WLTCモードの27.4km/Lという燃費はリアルワールドの走りで実現できるはず。


内装のシートやインパネも同色でマッチングしているところがお洒落。

安全装備も一段と充実

新型フィットはボディ剛性が上がっているし、コーナーに入った時のレスポンスが旧型より明らかに進化している。狙ったラインをピタッとトレースしてくれて、ボディロールも少なく、思い切りプッシュしない限り、アンダーステアは出ない。今回、新しいスタアリング・システムのVGR(バリアブル・ギア・レシオ)がつくことによって、コーナーにターンインした時の応答が早く、適度に軽い手応えで狭い路地での運転もしやすくなった。

ホンダSensingという安全支援システムの進化も無視できない。今話題の踏み間違え防止の問題に対応したこのシステムでは、衝突軽減ブレーキ、誤発進抑制機能、後方誤発進抑制機能、ACC、レーンキープなどが搭載されることによって、クラストップレベルの安全装備と言える。

女性と男性どちらのテイストにも合うこの温かい新デザインは、より視認性がよくなり、安全性も磨かれ、2モーターのおかげで走りがグーンと向上した。187万円からの新価格も魅力。この1台は間違いなく、今年の日本カー・オブ・ザ・イヤーの有力候補と言える。

ピーター ライオン

1988年より日本を拠点に活動するモーター・ジャーナリスト。英語と日本語で書く氏 は、今まで(米)カー&ドライバー、(米)フォーブス、(日)フォーブス・ジャパン 、(英)オートカーなど数多い国内外の媒体に寄稿してきた。日本COTY選考委員。ワー ルド・カー・アワード会長。AJAJ会員。著作「サンキューハザードは世界の’愛’言葉 」(JAF出版、2014年)。2015から3年間、NHK国際放送の自動車番組「SAMURAI WHEELS」の司会を務める。スラッシュギアジャパンでは自動車関連の記事・編集を担当し、動 画コンテンツの制作に参画する

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