米NTSB(国家運輸安全委員会)は、Teslaが同社の運転支援技術「Autopilot」の安全性に関する懸念に対応していないことを非難するとともに、NHTSA(米国運輸省道路交通安全局)による事故の調査が不十分であると批判しています。多くの業界観測筋は、NTSBが先日の公聴会で先進運転支援技術に悲観的な姿勢を示すことは予想していましたが、委員会の批判は予想以上に厳しいものでした。
審理では、2018年にTesla Model Xのオーナー、Walter Huang氏が高速道路の車線分離帯に衝突、死亡した事故に焦点が当てられています。Huang氏は事故当時TeslaのAutopilotを使用しており、同社のシステムに不具合があるのではないかと疑われてきました。Teslaは後に、彼が「ハンドルに手を戻すように」という車からの警告を無視したと主張。Autopilotに対する疑念を否定しています。
Huang氏が運転中、自身のスマートフォンでゲームをしていたことが確認されています。ただ、Model Xはそうしたドライバーの動きを検知できずに走行を継続。悲惨な事故に至りました。Teslaはこのシステムを「ベータ版」と説明し、あくまで安全運転の責任は常にドライバーにあるとしています。しかし、このシステムの「Autopilot」というネーミングには批判もあり、「自動運転」を示唆するようなものであるため、一部のオーナーは完全な自動運転に対応できると誤解する可能性もあります。
NTSBは25日、いくつかの要因が重なって今回の事故につながったという考えを表明。Autopilotの走行車線を予測できないシステムに問題があったと、同委員会は結論付けました。同時に、Huang氏がスマートフォンの操作に気を取られ、Tesla Model Xからの警告を無視したことも認めています。
NTSBは事故が起こる前の2017年、レベル2の運転支援システムを提供する自動車メーカーに対し、ドライバーへの注意喚起システムやその他の安全性に関する勧告に対応するよう求めたものの、Teslaはまだ対応していないと指摘しました。BMW、日産、Volkswagenなどは対応済み。指摘には、レベル2のシステムを有効にできる場所に制限を設けることも含まれていました。Teslaは2018年の事故調査の当事者から外されましたが、それはNTSBが公式報告書の前に事故の詳細を公表したことに異議を申し立てたからでした。
NTSBの批判の矛先は運輸省にも
NHTSA(運輸省道路交通安全局)は、以前にもAutopilot関連の衝突事故を調査したことがありますが、NTSBはその取り組みを評価していません。第一に、NHTSAは欠陥を発見しなかったものの、NTSBは、ドライバー監視システムがどの程度うまく機能しているか、「システムの制限に伴うリスク」があるかどうかなどを「十分に調査しなかったこと」が要因だと主張しています。
また、同委員会はNHTSAがAutopilotの「予測できる将来的な誤用」を考慮していないことを批判し、Teslaのシステムをさらに評価する必要があると主張。批判はTeslaのテクノロジーだけに集中しているわけではありません。NTSBは、NHTSAと運輸省に対し、レベル2の運転支援システム全般に関する指導が足りないことを指摘しました。
NHTSAはこうした指摘に対し、「NHTSAはNTBSの報告書を認識しており、慎重に検討する。」と述べました。「全ての自動車は、人間のドライバーが常に制御されていることを必要とし、また国家は、人間のドライバーに運転に対する責任を負わせている。高度な運転支援機能を含む、注意力に不足による事故は、大きな懸念事項である。」
意外なことに、Appleなどのスマートフォンメーカーも委員会の怒りを買いました。NTSBは、「運転の最中にオーナーが携帯電話を見ることを妨げるシステム」が自動的に有効にならない、あるいは広く使われていないという事実を批判しました。このようなシステムは、デフォルト設定として皆さんもインストールすることをお勧めします。
私たちは現在、TeslaにNTSBの審問についてコメントを求めています。