マセラッティは、「MC20」のコンバーチブルモデル「MC20 Cielo(チェロ)」を発表しました。コンバーチブルのスーパーカーは、富裕層の間で常に人気がありますが、マセラティはグラントゥーリズモのコンバーチブルの生産を2019年に終了して以来、コンバーチブルのスーパーカーが不在状態となっていました。
MC20クーペの発表から約1年半後にお目見したコンバーチブルモデルは、イタリア語で「空」を意味するチェロと名付けられました。
無限に広がる空
ハードトップにはボタン操作で曇りガラスからクリアに切り替えることができるPDLCガラスルーフを採用。透明度を変えることができるガラスルーフは、フェラーリの575Mベースのスーパーアメリカや、マクラーレン720Sにも導入されていますが、MC20の責任者であるFederico Landini(フェデリコ・ランディーニ)氏は、MC20発表前のメディアブリーフィングで、これらは完全な曇りガラスできないので、頭の日焼けを避けられないと口にしたそうです。
時速50km/h以下での動作が可能で、ルーフはわずか12秒でリアハウジングに格納され、マセラティによれば、ルーフの収納により荷室スペースが犠牲になることはないそう。MC20クーペでは透明だったエンジンルームを覆うカバーはチェロ専用のポリカーボネート製カバーに代わり、巨大なマセラティ・トライデントデカールでマセラティ愛を表現することも可能です。
同じだけれど違う
コンバーチブル化は時としてベース車のデザインを台無しにしてまうことがあります。マセラティのKlaus Busse(クラウス・ブッセ)氏は、チェロではクーペのルーフラインを再現すること、コンバーチブルトップ機構の重量感を感じさせないようにデザインすることが重要だったと語っています。
ブッセ氏はこの2つの課題をシート後方のフェアリングによって解決したと明かしました。しかし、これにより折りたたまれたルーフがエンジンの上に乗っているため、MC20クーペの様にエンジンが外から見ることができない。
チェロでは、MC20クーペに採用されたベント式エンジンカバーが使えないため、エアインテークの位置の変更や、エンジンルームの熱気を排出するための新しいアウトレットの追加などを行いました。また、マセラティによるとトップの開閉状態は空力効率に影響はないそうです。
ギブ & テイク
最高のエンジニアリングを駆使しても、トップレスにはどうしても妥協が伴う。たとえば、開閉可能なルーフはどうしてもねじれ剛性を低下させますが、マセラティのエンジニアは最初からコンバーチブルモデルのねじれ剛性低下問題の解決策を用意していました。
スーパーカーのプロジェクト開始当初からMC20のカーボンファイバー製モノコックシャシーを、クーペとチェロ、そして近々発表される電気自動車(EV)用に、それぞれ別のバージョンを設計。チェロでは、シャシーに使用するカーボンファイバーの配分を調整することで、スパイダーでもねじれ剛性を保持しているそうです。
チェロでは、レイアップ(モノコック構造上のカーボンファイバー・シートの配置)を変え、ドアには新しい構造要素が加えられています。また、ルーフマウンティングもねじれ剛性を高めると、ランディーニ氏は指摘します。
MC20クーペと同じネットゥーノエンジン搭載
MC20クーペにも搭載された、3.0リットルV型6気筒ツインターボネットゥーノ・エンジンを搭載し、最大出力は630hpで、最大トルクは730Nmを発揮。ミッドエンジンから後輪へは8速デュアルクラッチトランスミッションを介してそのパワーを伝達します。
V6エンジンではスーパーカーとしてはスペック不足に聞こえるかもしれませんが、ネットゥーノ・エンジンはマセラティがF1由来のテクノロジーを採用し、独自に開発したハイパフォーマンスエンジンです。ツインコンバスチョンと呼ばれる燃焼システムにより、燃焼効率を高めることができ、比較的小さなエンジンでも600hp以上のパワーを生み出すことが可能です。
MC20 チェロの車両重量は約1,540kgと、クーペと比べ65kgの重量増に抑えられています。0-100km/h加速はMC20クーペの2.9秒以下に対し、MC20 チェロは3.0秒以下、最高時速はMC20 クーペの325km/hに対し、MC20 チェロは320km/hと、どちらも大きな差はなく、エンジンサイズを考慮すると卓越した数値をはじき出しています。
クーペと同様、MC20 チェロにもアジャスタブルサスペンションと、「GT」「Sport」「Corsa」「Wet」そして「ESC Off」の5種類のドライビングモードが備わっています。 また、急勾配の車道でカーボンファイバー製のノーズを擦らないように、フロントアクスルリフトシステムが装備されています。
先進テクノロジー搭載
マセラティ・インテリジェント・アシスタント(MIA) 10.25インチのインストルメントクラスターと10.25インチのインフォテインメント用タッチスクリーンを搭載し、Android AutomotiveベースのOSを採用しています。オーディオは、トップの開閉による音響の変化に考慮しチューニングが施されたソナス・ファベールのオーディオシステムの12個のスピーカーを配しています。
アナログな操作系を最小限にし、トップの開閉は中央のタッチスクリーンで操作、また、ドライビングモードの選択もタッチスクリーンに新たに搭載されたドライブモードセレクターで行います。
納車開始は2022年末からを予定
MC20 チェロのデリバリーは2022年末から2023年初頭に開始される予定です。プリマセリエローンチエディションは、新色ボディカラーの「アクアマリーナ」、足回りにはマットブラックの20インチホイール、そしてインテリアにはアイスカラーのアルカンターラとレザーが採用されています。
マセラティは、少なくとももう一つMC20の別モデルを投入するとされています。また、マセラティのゼロエミッション・ロードマップの一環として、Nettuno(ネットゥーノ)V6に代わる新しいEVドライブトレインを搭載した、フル電動のMC20 Folgore(フォルゴーレ)が2025年以前に登場する予定です。ランディーニ氏によると、MC20 フォルゴーレは、MC20 チェロのフォールディング・ハードトップが搭載されるそうです。