フォルクスワーゲン(VW)が発表した市販版のID. Buzzは、初代VWマイクロバスファンを楽しませてくれる期待どおりの一台となりそうです。個性的なデザイン、サステイナビリティ、そして実用性を兼ね備えた乗用バンのID. Buzzと、ID. Buzzカーゴは、他の電気自動車(EV)とは一味も二味も違います
自動車界のアイコンといっても過言ではない「VWマイクロバス」。1950年に「フォルクスワーゲン・タイプ2」という名称で発売されたこの車は、実はビートルに続くフォルクスワーゲンの2番目の車でした。小型商用バンとして設計されましたが、その汎用性の高いキャビンは、複数列のシート構成や小型RV車への改造に適していた。また、1960年代には、カウンターカルチャーにとって手頃な価格の車として多くのファンを獲得しました。
そんな歴史を持つフォルクスワーゲンのEVコンセプトID. Buzzが2017年1月に発表され、概ね熱狂的な反響を呼んだのは当然のことだったと言えるでしょう。当初は、VWの新しいMEBアーキテクチャの柔軟な対応性を示すことを目的としていましたが、大きな反響を受けたことにより、VWはID.Buzzの市販化を約束しました。それから5年が経過し、ようやくその約束の成果をこの度見ることができたのです。
ID. Buzzには、5人乗りの乗用バン「ID. Buzz」と、3人乗りの商用バン「ID. Buzz Cargo(カーゴ)」が用意されています。乗用バンのID. Buzzは市販のマイクロバスEVが、デトロイト・オートショーで初めて披露されたコンセプトにかなり忠実な、シンプルなラインでデザインされています。
ショートオーバーハング、豊富なグラスハウス、そして実用性重視の設計がポイントとなっており、フロントにはLEDヘッドライト、デイタイムランニングライト、フェイシアを覆うライトバー、リアにはテールライトをつなぐ同様のライトバーが装備されています。ホイールは18インチが標準ですが、乗用モデルでは、オプションとして最大21インチのホイールが用意される予定です。
カラーバリエーションは、キャンディホワイト、モノシルバー、ライムイエロー、スターライトブルー、エナジェティックオレンジ、ベイリーフグリーン、ディープブラックの単色7色に加え、オプションでツートーンペイントが用意されています。キャンディホワイトのルーフとボンネットVに、キャラクターラインより下の4色を選択することができます。ライムイエロー、スターライトブルー、エナジェティックオレンジ、ベイリーフグリーンの4色で、サイドミラーとハンドルも同色で仕上げられています。
乗用モデルと商用モデルの両モデルともショートホイールベース仕様のプラットフォームがベースとなり、全長4,712mm、全幅12985mm、ホイールベースは2,988mm。最小回転半径は5.6mに抑えられています。2023年にはエクステンデッドホイールベース仕様も登場する予定です。
乗用モデルでは、前後に244mmスライド可能な前列シートと、150mmスライド可能な3人乗りの後方シートと、2列シートの5人乗り構成で、荷室容量は1,121Lを確保、後部座席は60:40分割で折り畳む荷室を拡大することも可能です。
VWによると、今後、3列シート6人乗りの標準ホイールベース仕様のID. Buzz、3列シート7人乗りの延長ホイールベース仕様のID. Buzzが用意されるそうです。一方、ID. Buzzカーゴは、運転席とダブルベンチの3席を標準とし、2席はオプションとして用意。リアは、サイドウォールにバー、フロアにタイダウンループを備え、最大3,899Lの容量を持ち、テールゲートとシングルスライドドアが標準、セカンドスライドドアがオプションで用意されています。
カラーリングは、ベーストリムがSoulで、10色のアンビエントライティングを標準装備。30色に光るライティングはオプションで、ID. Buzzにはエクステリアフィニッシュと同じ2トーンのスキームが4種類用意されています。VWは、レザーやその他の動物由来の布地を一切使用せず、回収した海洋プラスチックとペットボトルのプラスチックを組み合わせたSEAQUAL糸など、主にリサイクル由来の素材がインテリアに使用されています。
センターコンソールにはインフォテインメント用に10インチのディスプレイを標準搭載。オプションで12インチのディスプレイも選択可能です。中央のスクリーンの下には、温度、音量、デュアルゾーンHVAC、ドライバーアシストテック、ドライバープロファイル、パーキング機能のメニュー用タッチセンサー式ボタンとスライダーが配備されています。
フォルクスワーゲンID.4など、他のMEBベースのEVと同様、ニュートラル、ドライブ、リバースを回転して選択するコラムストークスイッチを採用。ステアリングホイールの左側にはライトとガラスデフロストのデジタルコントロール、左側には2つのUSB-Cポートとワイヤレス充電トレイがあります。ID. Buzzは、センターコンソールに最大2つ、助手席ドアに1つ、後部のスライドドアに2つ、そしてダッシュカム用のバックミラーに1つのUSB-Cポートを追加することが可能です。
ナビゲーションの指示や危険な状況に応じて、光箇所や色が変わるID. Lightがフロントガラスの下部分に配置されています。欧州仕様のID. Buzzには、フロントアシスト、レーンアシスト、ダイナミックロードサインディスプレイが標準装備されます。オプションとして、アダプティブクルーズコントロール、サイドアシスト、トラベルアシスト、エマージェンシーアシスト、ラークアシスト、ライトアシスト、エリアビュー360度カメラなどが用意される予定です。
ID. Buzzは、後輪駆動、最大出力150kW、最大トルク310Nmの単一駆動方式を採用し、最高速度は電子制御により145km/hに制限されます。フォルクスワーゲンによると、初期の82kWhバッテリー(実容量77kWh)による気になる航続距離は、ID. Buzz発売間近に詳細を発表する予定だそうです。最大170kWのDC急速充電に対応する予定で、適切な充電器を用意すれば5〜80%まで約30分で充電できます。
いずれはプラグ&チャージにも対応し、充電に関する不便さの解消を目指しています。双方向充電は、特別な家庭用充電器と一緒に使えば、停電時にID. Buzzが家庭に電力を供給することができます。VWは、最終的には、電気需要が容量を超えたときに、ID. Buzzのバッテリー電力をグリッド供給出来る様になると語っています。
ID. BuzzとID. Buzzカーゴの価格は今回明かされませんでした。欧州での発売は2022年第3四半期、米国とカナダでは2023年にデビューし、発売は2024年になると見込まれています。また、米国仕様のID. Buzzはエクステンデッドホイールベースをベースに、デュアルモーターが搭載される予定です。