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フィスカー 電動SUV『オーシャン』量産プロトタイプを公開 今度こその市場投入実現なるか

米Fisker(フィスカー)は、現地時間11月17日に開幕したLAオートショーで、電気SUV「Ocean」(オーシャン)の量産プロトタイプを公開しました。40,000ドル以下と電気SUVの価格を大幅に下回る価格設定が話題になったものの、量産の計画が順調に進まないという苦い歴史を経験したフィスカー。同社によると、ベースグレードとなるオーシャン・スポーツは航続距離250マイル(約400km)、最上位グレードのオーシャン・エクストリームでは航続距離350マイル(約560km)を実現、量産開始は1年後になる見込みです。

フィスカーが主流の電気自動車を作ることを目指してから今日に至るまで、その量産計画には紆余曲折がありましたが、一つだけ貫いてきたことは、積極的な価格設定です。フィスカーよると、オーシャンは、補助金・税金前の価格で37,499ドル(約430万円)から。

オーシャン・スポーツは、1基のモーターをフロントに搭載した、前輪駆動。動力性能は最大出力275hpで、0~60km/h加速6.9秒。フィスカーの創始者Henrik Fisker(ヘンリック・フィスカー)氏によると、雪のようなトラクションの低い状況下での電気SUVの性能を高めるために前輪駆動を選択したそうです。

一方、販売予定価格49,999(約573万円)の2023オーシャン・ウルトラは全輪駆動車で、車両の前後1基づつ、計2基のAWDモーターを搭載。後部に搭載されたモーターは、リアディスコネクト機能により、不必要時にはオフにしての走行も可能です。航続距離は340(約547km)マイルで、最大出力540hp、0~60km/h加速は3.9秒を実現します。

そして最上位グレードのオーシャン・エクストリームは航続距離350マイル(約563km)、最大出力は550hp。オーシャン・ウルトラと同様に、2基のモーターを搭載し、リアディスコネクト機能の他に、パフォーマンスと安全性を向上するフィスカー独自のトルクベクタリングシステム「Smart Traction」を採用。0~60km/hの加速は3.6秒で、販売価格は68,999ドル(約790万円)となっています。

最初に生産される5,000台は、22インチのホイールが標準装備され、機能を満載した特別仕様車Ocean One(オーシャン・ワン)トリムで、価格は68,999ドル(約790万円)です。

果たしてオーシャンが実際に市場に登場するのかを疑問視する声もありますが、それも無理のないことと言わざるを得ません。手頃な価格の電気SUVを市場に投入するという野望を抱いているフィスカーですが、他の多くの自動車メーカーも同じことを約束していたにもかかわらず、結果が伴わないことが多かったからです。

フィスカーは特別買収目的会社(SPAC)により、ニューヨーク市場への上場を果たし、生産パートナーとタッグを組見ました。オーシャンにはフォルクスワーゲンのEV用プラットフォームMEBが採用されるとの憶測に反し、フィスカーは、最終的にカナダの自動車部品メーカーであるマグナとEV製造の契約を締結しました。

マグナと共同開発されたオーシャンのエクステリアは、スリムなフロントとライトとは対照的な大きなホイールアーチが際立つデザイン。ボディカラーはマット仕上げを含む7色が用意されています。インテリアはリサイクル素材をふんだんに使用し、サステナビリティにも考慮。オプションで、16基のスピーカーからなる500wのフィスカー・ハイパー・サウンドオーディオシステムを搭載することも可能だそうです。

ダッシュボードには17.1インチのタッチスクリーンを装備。このタッチスクリーンは、路上での使用時には縦向き、駐車時にエンターテインメントを楽しむ時には横向きと、用途に応じて縦横回転が可能。レーダー、超音波センサー、カメラを組み合わせた独自の先進運転支援システム(ADAS)を搭載し、緊急ブレーキなどに対応しています。フィスカーは、OTAアップデートにより、ADASの機能などを強化する約束していますが、今回のオートショーで展示されたプロトタイプの機器は機能しない飾り物にとどまりました。

2023 オーシャンに搭載されるバッテリーは、今月頭に発表されたとおり中国CATL社製のもの。250kW以上のDC高速充電に対応し、ベースグレードのオーション・スポーツはリン酸鉄リチウム(LFP)バッテリー、上位グレードのオーシャン・ウルトラとオーシャン・エクストリームには三元系極性(NMC)バッテリーが採用されます。

オーシャンには、ソーラーパネルルーフも搭載される予定。それ単体でEV車を動かすほどの電力は供給できませんが、フィスカーによれば、理想的な環境であれば年間2,000マイル(約3219km)、カリフォルニアの「典型的な」環境であれば1,500マイル(約2414km)の航続距離延長が可能とのことです。グリーンエネルギーを活用し、少しでも環境への影響を軽減できるのは魅力的です。

フィスカーは、2022年にオーシャンの量産を開始し、2022年11月よりデリバリーを開始すると発表しています。また、従来のディーラーネットワークではなく、直接販売を行い、購入希望者が購入前に直接オーシャンを下見できる「エクスペリエンスセンター」の設置も予定されています。