フォード傘下の高級車ブランド、リンカーンは、2030年までに全車種を電動化することを発表しました。内燃機関を廃止し、ゼロ・エミッションを目指す業界の流れに乗るものです。リンカーンは、複数のSUVにプラグイン・ハイブリッド仕様を導入した後、2022年に最初のEVを発表するとしています。
また、リンカーンは今後10年で、世界の販売台数の半分をゼロ・エミッション車にすることを目指しています。現在、ゼロ・エミッション車を1台も販売していない同ブランドにとって、野心的な目標と言えます。『コルセア・グランドツーリング』のような一部車種にはPHEVドライブトレインが搭載されていますが、電気のみでのゼロ・エミッション走行距離は40km程度しかありません。
リンカーンは、後輪駆動および全輪駆動のバッテリー駆動モデルの土台となる、柔軟性の高い新プラットフォームを使用します。リンカーンはこのプラットフォームを、4車種の「新しくて個性的」なEVに採用する予定としています。これは、同ブランドが当初、EVに使用する計画だったリビアンのスケートボード・プラットフォームとは異なるものです。
最初の完全EVがどのようなクルマとなるかについては言及されていません。市場の動向や、大型バッテリーを搭載できる空間的余裕を考慮すると、SUVやクロスオーバーが採用される可能性があります。ただし、セダンとなる可能性も捨てきれません。
今年4月に開催された上海モーターショー2021で公開されたコンセプト「ゼファー・リフレクション」は、一大市場である中国を意識した大型高級セダンです。生産中止となったリンカーン『コンチネンタル』の特徴を継承しつつ、より大胆なスタイリングを実現したこのコンセプトカーは、リンカーンの未来を予見させるものとして登場しました。
リンカーンは新型EVについて次のように語っています。
「デザインを進化させ、EVとなったリンカーンは、より広々としたインテリアを実現し、リンカーンの聖域を究極に表現します。エクステリアは印象的でモダンな美しさを表現し、象徴的なリンカーンの星は、電動化された未来に合わせて進化しています。インテリアでは、巧みな収納方法やミニマルなパネルなど、細部にまで配慮し、すべての人に若々しい空間を提供しています。また、大きく広がったパノラミック・ヴィスタ・ルーフは、自然光を取り込み、全体的に開放的で広々とした印象を与えます」
EVの特徴である、瞬時に得られるトルクや静かな駆動系、機械部品の室内空間への影響が少ないことなどは、高級車にとって有利に働きます。
リンカーンの目標は、親会社であるフォードよりも積極的です。フォードは、2030年までに自社モデルの約40%をEVにすると見込んでいますが、そのためには商用トラックの電動化を進めなければなりません。一方、リンカーンは市場を絞ったポートフォリオを持っているため、電動化への移行は比較的容易なのだと思われます。
充電網に関してはフォードと同様の戦略をとっており、エレクトリファイ・アメリカ社など米国内の企業と提携して、「リンカーン・チャージング・ネットワーク」と呼ばれるインフラを構築。専用アプリ「リンカーン・ウェイ」を通じて利用できるようにします。また、Androidベースの新しい車載インフォテインメント・システムからもアクセスできるようになるでしょう。
また、高速道路でのハンズフリー運転支援システム「リンカーン・アクティブ・グライド(Lincoln ActiveGlide)」もあります。フォードの「ブルークルーズ」と同様にカメラによりドライバーを監視し、ドライバーが前方に注意を払っていればハンドルに手を添えていなくても半自律走行を継続できるシステムです。
親会社のフォードは2021年後半に、『マスタング・マッハE』および『F-150』にブルークルーズを実装するための無線ソフトウェア・アップデートを計画しています。