EVメーカー大手、テスラの新型『モデルS』および『モデルX』に、半導体企業のAMD社製コンピュータが搭載されます。台湾で開催中のCOMPUTEX(国際コンピュータ見本市)の基調講演で明らかになりました。テスラは今年初め、モデルSとモデルXの改良を発表した際、次世代ゲーム機レベルの性能を実現すると述べていました。
クルマのインフォテインメント・システムは、ナビの地図をスクロールするだけでも性能不足を感じさせることが多いため、テスラの主張は一部の方面から懐疑的に受け止められていました。具体的にどのようなコンピュータが搭載されるのかは、これまで明らかにされていませんでした。
新型モデルSおよびモデルXでは、AMDの「Ryzen APU」と「RDNA2 GPU」を採用しています。その結果、AMDによれば、最大で10テラフロップスの演算能力が得られるとのこと。これは、イーロン・マスクもTwitterで指摘していたように、「プレイステーション5」や「Xbox Series X」などと同等の性能です。
近年、スマートフォンやタブレットに慣れ親しんだドライバーがクルマに求めるレベルも高くなっていることから、インフォテインメント・システムは日を追うごとにパワーアップしています。車載用コンピュータの分野ではNVIDIAが先行していましたが、最近ではQualcommの「Snapdragon」や、高級EV『ポールスター2』に搭載されているIntelの「Android Automotive」も注目を集めています。
当然ながら、ソフトウェアも同様に重要です。AAA(トリプルエー)級のゲームをプレイできるハードウェアがあっても、それをサポートするOSがなければ、性能はあまり意味を持ちません。そのため、例えばGoogleは、スマートフォンのOSを利用したプラットフォームを開発し、クルマ本体との深い連携を実現しています。
一方、テスラは、そのソフトウェア開発を自社で行っています。自動車メーカーがゲーム性を重視するのは、移動中や充電での待ち時間など、車内で快適に過ごす方法を模索しているためです。特にEVにおいては、数十分単位の長い充電時間が販売時の課題となっていることから、比較的小さな車載ディスプレイでもAAAゲームをプレイできるというのは、一定のユーザーにとって魅力となるのではないでしょうか。
しかし、車載用コンピュータの性能はゲームだけに関連するものではありません。テスラでは、「オートパイロット」などの高度な運転支援システムや、最終的には完全な自動運転を実現するため、車載AIの使用を増やしています。独自の「自動運転用コンピュータチップ」の開発も行っていますが、AMDの専門知識を活用することで、さらなる飛躍が期待されます。