EVメーカーのテスラは25日、米国で販売する小型セダン『モデル3』と小型クロスオーバー『モデルY』に搭載されている安全システム「テスラ・ビジョン」からレーダー付きセンサーを外し、今後はカメラのみを使用すると発表しました。テスラはこの決定について、カメラを使った運転支援、および最終的には完全な自動運転を目指すものだとしていますが、これにより両モデルの安全性評価が大きく変化します。
モデル3やモデルYを注文し、納車を待っていたユーザーにとっては驚きの発表と言えそうです。まだ納車されていないユーザーは、自分に割り当てられた車両にレーダーが搭載されているかどうかをオンラインで確認できる、とテスラは述べています。また、複数の安全機能についても「一時的に制限されたり、無効になったりしている状態で納車される場合がある」としています。
走行位置を車線の中央に維持するステアリング支援機能は、今後、レーダー未搭載車では対応速度が120km/h以下に制限され、先行車への追従距離も長くなります。また、車線逸脱防止機能は完全に無効となります。これ以外にも、前方衝突警告(FCW)、自動緊急ブレーキ(AEB)、車線逸脱警告(LDW)、ダイナミック・ブレーキ・サポートなど、複数の機能が(少なくとも一時的には)無効になるとされています。
こうした安全支援システムの仕様変更を受け、各機関でモデル3とモデルYの安全性評価の見直しが行われています。消費者情報誌「コンシューマーレポート」は、NHTSA(米国運輸省道路安全局)による安全性評価が失われることになると指摘。
実際、IIHS(米国道路安全保険協会)とコンシューマーレポートは、テスラ車の安全性評価を調整する方針だといいます。IIHSでは、最高評価の「トップセーフティピック+」の指定がなくなり、コンシューマーレポートでは「トップピック」から除外されることになります。コンシューマーレポートは、モデル3を「推奨車」に格下げするとしています。
ADAS(Advanced Driver Assistance System)と呼ばれる高度運転支援システムはいまや、クルマの安全性テストで高い評価を得るための重要な要素となっています。ADASは、構造補強やエアバッグのように衝突時の衝撃を和らげる機能とは異なり、事故を未然に防ぐことを目的としています。たとえ事故を完全に回避することができなかったとしても、被害軽減につながると期待されています。
今後、カメラのみのシステムでも十分な安全性が確認されれば、評価を回復できる可能性もあります。しかし、それまでの間、IIHSは両モデルの製品紹介ページに、システムの変化とその影響についての注意書きを加える予定です。
IIHSの広報担当者は声明の中で、「IIHSは新たにテストを行う計画で、システムが正常に機能すれば、この注意書きを削除する場合もある」と述べています。
テスラは、完全自動運転には視覚ベースのカメラシステムだけで十分であるという考えを示しており、複数のセンサーやレーダーを用いた従来のシステムとは一線を画しています。