自動車製造業界で最も重要な課題の1つは、言うまでもなく安全性の向上です。近年、すべての新型車において、アクティブ・セーフティシステムが設計上の大きな役割を果たしています。ドライバーを支援し、危険を予測して事故を未然に防ぐことができるようなソリューションを提供することで、ドライブをより良いものにしていこうとしています。サムスンは、自動車の安全性向上に貢献する最も有望な技術革新の1つが「照明」であると述べています。
昨今、自動車の照明において注目を集めているのが、「ADB(アダプティブ・ドライビング・ビーム)」と呼ばれるものです。対向車や先行車を検知し、自動でロービーム/ハイビームを切り換えるオート・ハイビームの進化版で、周りの車両に配慮しながらもハイビームを基本とし、視認性を最大限に高めるものです。サムスンは、「PixCell LED」と呼ばれる世界初のソリューションを採用した新タイプのADBを発表しました。
PixCell LEDは、100個以上の独立したライトとシリコンウォールを1つのLEDチップに統合したものです。サムスンによると、的を絞った高コントラストの照明を実現し、ドライバーの道路視認性を大幅に向上させるとのこと。暗闇や雨、霧の中など、あらゆる環境で効果を発揮するとされています。
PixCell LEDの発表映像の中でサムスンは、従来の自動車のようにロービームとハイビームを切り替えるのではなく、対向車のドライバーの目に光が当たる部分だけカットすることができるといいます。つまり、PixCell LEDは対向車のドライバーの目を眩ませることなく、ヘッドライトの照射範囲を維持することができるのです。
このようなソリューションは、ドライバーの安全性を向上させるために非常に重要と言えます。特に、野生動物が飛び出してくるような地域では、可能な限り広い範囲を明るく照らしていた方が安心感は高いでしょう。ロービームとハイビームの単純な切り替えでは、照射範囲(安全を確認できる範囲)が大きく変化してしまいます。
日本の道路運送車両法では、ハイビームが「走行用」、ロービームが「すれ違い用」と定められていますが、ハイビームを使用する人はかなり少ないようです。2020年10月、栃木県警が県内で行った調査によると、ハイビームの使用率はわずか13.9%だったとされています。地域や時間帯によっても多少の差はあるかもしれませんが、約8割のドライバーがハイビームを使用せずに走行していることになります。
現在、多くの新車にオート・ハイビームが搭載されており、ハイビーム使用率の上昇とともに安全性も高まっていくと思われます。ロー/ハイの切り替えだけでなく、照射範囲を細かくスムーズに調整することができれば、さらなる安全性向上と運転中のストレス軽減につながるかもしれません。
サムスンはいまのところ、このPixCell LEDの市販車導入時期については言及していません。