フォードが支援する米国の自動運転開発企業、アルゴ(Argo)は、独自のLIDARセンサーを発表し、長距離の検知能力と実用的なコストを両立したとしています。夜間の使用や高解像度のスキャンに対応しながら、400mの検知距離を実現しているとのこと。自動運転車への活用が期待されます。
LIDAR(ライダー)は「Light Detection and Ranging」の略で、周囲を正確にマッピングすることができるため、自動運転車では一般的な技術となっています。LIDARの仕組みは、目に見えないレーザー光のパルスを発射し、それが物体に跳ね返って受信機に戻ってくるというもので、その往復の時間を計ることで、各物体との距離を把握することができます。
複数のパルスを利用することで、物体や地形を点群(ポイントクラウド)と呼ばれる点の集合体として、コンピューター上で3D構築することができます。これにより、クルマの周囲の3次元空間に、他の車両や歩行者、障害物などがマッピングされます。テスラなどの例外はありますが、ほとんどの自動運転車では、少なくとも1台のLIDARと他のセンサーを組み合わせて使用しています。
アルゴが新たに開発したLIDARは、2017年にPrinceton Lightwave社を買収した際に社内に持ち込まれた技術をベースにしています。この「ガイガーモード」と呼ばれるセンシング技術により、1光子の光を検出でき、反射率の極めて低い物体も発見することが可能になりました。また、通常よりも高い波長で動作するため、高解像度と検知距離の拡大を実現しています。
アルゴのLIDARシステムは360度の視野を持ち、夜間の真っ暗な状態でも黒塗りのクルマを発見できます。検知距離は400mで、トンネルを抜けるときなど、暗いところから明るいところへの急激な変化にも対応し、小さな動く物体と静止した物体を区別することもできます。
これは、アルゴがSDS(Self-Driving System)と呼ぶシステムの「中核」となります。アルゴは匿名の委託製造業者と協力し、同LIDARの量産化を目指しています。現在、自動運転車でのテスト運用が始まっており、将来的には大手自動車メーカーへの納入を目標としています。
アルゴは、「フォードやフォルクスワーゲン・グループとの量産計画により、自動運転の配送・配車サービスといった商用利用が間もなく実現する」と述べています。
フォードとフォルクスワーゲン・グループは、2020年半ばにアルゴと26億ドルの投資契約を結びました。両社は技術を共有することになるかもしれませんが、それぞれの戦略に応じて、異なる方法で実用化されるでしょう。