英国のネイチャー・パブリッシング・グループ(NPG)の調査によると、EVを購入した人のうち20%(5人に1人)が内燃機関車に戻ったとされています。世界各国でクルマの電動化が推し進められていますが、EVが普及するまでの道のりは険しいものとなっています。
自動車メーカーはEVラインナップの拡充を急いでいますが、その中で、これまでガソリンやディーゼルなど内燃機関車に慣れ親しんできた消費者を、どのようにEVへ誘導するかが課題の1つとなっています。しかし、充電インフラが整備されていないことや、内燃機関を搭載したクルマに比べて価格が高いことなどから、購入のハードルは決して低くないというのが現状です。
NPGが発行する科学雑誌「Nature Energy」に掲載された研究結果では、そうしたハードルを乗り越えてEVの購入に踏み切ったにも関わらず、従来のガソリン/ディーゼル車に乗り換えてしまう人が一定の割合で存在することが明らかになりました。研究チームは、2012~2018年に米カリフォルニア州でEVを購入した4,160人を対象に調査を行いました。調査対象者のうち、次に乗るクルマに内燃機関車を選んだ人は1,840人に上るとのこと。
データは数年前のものであり、カリフォルニア州と他の州では環境も異なるため、一概に20%の人がEVを手放してしまうとは言い切れません。EV普及率は、米国全体では2%に満たない状況ですが、カリフォルニア州では8%(ニューヨーク州の9倍)と一歩リードしています。当然、国によっても大きな差があります。しかし、一度EVを購入した人が、「必ずしもそのままEVを乗り継いでいくとは限らない」ということに違いはないのではないでしょうか。
Nature Energy誌では、EVから内燃機関車に乗り換える可能性が高いのは、EVが「唯一の移動手段」となっている、または自宅での充電が整っていない人たちだとされています。また、EVの購入価格は同クラスの内燃機関車よりも高いため、所得によってはEVを乗り継いでいくことが難しく、手放すと決めた人は若年層に多いとのこと。
注目すべき記述は、「(手放すと決めた人たちにとって)公共の充電インフラの整備はあまり重要ではない」という部分です。通勤や買物など短距離の移動しかせず、長距離移動が少ないことがその理由として考えられます。自宅や勤務先など、一定の時間をとってゆっくり充電できる環境が整っていないと、EV所有における大きな足かせとなるのでしょう。同誌では、「公共充電インフラへの投資が、EVの普及に必要な万能の解決策ではないことを示唆している」と述べています。
興味深いことに、女性は男性よりもガソリン車に乗り換える率が高いという結果も出ています。ですが、その理由は定かではありません。