フォルクスワーゲンは、米国部門の社名を「ボルツワーゲン(Voltswagen)」に変更するというプレスリリースについて、4月1日に発表予定だったエイプリルフールのジョークであることを認め、社名変更は事実ではないとの声明を発表しました。この社名変更については、公式のプレスリリースが29日に発表されましたが、現在は撤回されています。
当初のプレスリリースによると、「ボルツワーゲン」の名称は電気自動車(EV)の『ID』シリーズに使用され、既存の内燃機関モデルとの差別化を図るとともに、電動化への移行を鮮明にするという意図が込められていたようです。また、「VW」のロゴはEVでは明るいブルーに、内燃機関モデルでは暗いブルーにするとされていました。
フォルクスワーゲンは、このプレスリリースを米国のメディアサイトから削除しましたが、その後しばらくはグーグルのキャッシュに文書が残っていました(現在は削除されている様子)。その中で、米国部門の社長兼CEOであるスコット・キーオは、この名称変更について、「国民のクルマという過去への敬意と、国民のEVになることがわたし達の未来であるという確固たる信念を意味する」と述べています。
しかし、同社は新たな声明の中で、これがすべてフェイクであったことを明らかにしました。「フォルクスワーゲン・オブ・アメリカは、社名をボルツワーゲンに変更することはありません。この社名変更は、エイプリル・フールの精神に基づいた発表であり、完全電動SUV『ID.4』の発売を強調し、すべての人に電動モビリティを提供するという当社のコミットメントを示すためのものでした。この件については、近日中に追加情報をお知らせします」
CNBCやロイターなどのメディアでは、関係者の話として、社名変更がいたずらではなく実際に行われるものであると伝えられています。なぜ、フォルクスワーゲンの関係者がメディアに対してこのような情報を提供したのか、近日発表されるという追加情報で明らかになるかもしれません。また、4月1日ではなく3月にジョークを流した理由についても説明がなされるでしょう。
今回の騒動は、新たに発売されるID.4に暗い影を落としています。ID.4は、MEBプラットフォームを採用した同社初の電動SUVであり、EVの普及を目指す中で非常に重要なモデルです。しかし、この社名変更騒動はSNS上で批判の声を集め、フォルクスワーゲンがいわゆる「ディーゼルゲート」と呼ばれるスキャンダルを長期にわたって隠蔽していたことを思い起こさせるきっかけとなっています。同社は以前、ディーゼルエンジン搭載車に排ガスを偽装する装置を導入し、スキャンダル発覚後は一連の裁判で沈黙を守った後、最終的に不正行為を認め、厳しい罰則を受けました。
以来、フォルクスワーゲンはEV向けのMEBプラットフォームを大々的に宣伝し、ディーゼルゲート賠償金の一部として出資したEV充電器ネットワーク「Electrify America」は、ブランドを問わない急速充電システムとして注目されるようになりました。最近では、象徴的なマイクロバスをEV化した『ID.Buzz』など、ファンの注目を集めるモデルが市場に投入されることが確認され、EV普及に向けた同社の取り組みは順風満帆と思われていました。
しかし、今回のような事態に陥ったことで、ブランドの信頼性を著しく低下させるだけでなく、社内でも大きな問題となる可能性があります。フォルクスワーゲンがこの問題を解決するためには、まず日付を間違えないようにカレンダーを購入すべきでしょう。