航続距離の向上に期待?日産「アリア」風洞実験公開 空気を切り裂くEVクロスオーバー

日産は、年内に発売予定の新型EV『アリア』の風洞実験の様子を公開しました。航続距離や走行性能に大きく影響する空力性能ですが、アリアでは空力係数(Cd値)0.297を目標としています。日産によると、これは同社がこれまでに生産したクロスオーバーの中で最も優れているといいます。

水中では移動速度が遅くなるのと同様に、陸上を走るクルマにとって空気は大きな抵抗となります。空気抵抗を減らすことができれば、クルマは空気を切り裂くように走り、燃費や航続距離の向上に繋がります。充電インフラの限られているEVにとって、空力性能は非常に重要な要素です。

日産『アリア』の風洞実験の様子

欧州で日産の商品企画担当副社長を務めるマルコ・フィオラバンティ氏は次のように述べています。

「発売時には、2020年のワールドプレミアで示した500kmという数値より、航続距離がさらに向上すると予想している。これにより、ドライバーは1回の充電でさらに遠くまで行けるという効率性と安心感を得ることができるだろう」

アリアのボディ形状やパーツは、英国の日産テクニカルセンター・ヨーロッパで調整が行われ、最終的にパリの風洞実験施設でテストされています。フラットなアンダーボディは安定性を向上させ、フロントエンドの形状とすっきりとしたボディラインは抗力を低減するとのこと。

日産テクニカルセンター・ヨーロッパのエンジニア、サルワル・アーメッド氏は「バッテリーに蓄えたエネルギーの大半は、単に空気の中を通るために消費する」とコメントしています。

「電動モビリティへのシフトが進む中、空力試験の重要性はますます高まっている。EVの空力特性は、車両の効率性(電力消費効率)に直結している。アリアは抵抗が少なく安定性が高いため、長距離を走行することができる」

クルマの空力性能に影響を及ぼすのはボディだけではありません。サルワル氏によると、抗力の3分の1はホイールとタイヤから発生するとのこと。ホイール周辺の空気を整流するデフレクターや、エンジンルーム(モータールーム)に侵入する空気を遮断するグリルシャッターなどにより抗力を大幅に改善できるといいます。

日産『アリア』

こうした空力特性を実際に確かめるためには、自社サイズの模型(またはプロトタイプ)を使った風洞実験が必要です。日産は、この風洞実験の結果、サイドミラーの位置が変更されるケースがしばしばあるとしています。アリアでは、一般的なAピラーの付け根ではなく、ドアに直接配置されています。

パリにある風洞実験施設では、最大風速240km/hを発生させる巨大タービンが使われています。猛烈な台風並みの風力ですが、アリアのテストでは風速140km/h程度で十分なようです。

EV市場の先駆者である日産が生み出す新型EVクロスオーバー、アリア。厳しい向かい風にさらされている日産が立て直せるかどうかは、このクルマにかかっているかもしれません。

林 汰久也

愛知県在住29歳/ハウスメーカーの営業を経て、IT系ベンチャーのメディア事業に参画。2020年よりフリーのライターとして活動開始/愛車遍歴:マツダ『RX-8』⇒シトロエン『C4』⇒スバル『フォレスター』&ホンダ『クロスカブ50』/ゲームはPS派だが、最近ゲーミングPCが欲しいと思っている。

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