米GM(ゼネラル・モーターズ)は、旧タカタ製エアバッグの回収・修理のため、約590万台をリコールすると発表しました。これまでGMは「危険性が低い」と主張してきましたが、NHTSA(米運輸省高速道路交通安全局)がこれを退けたため、要求に従わざるを得なくなりました。
旧タカタのエアバッグ問題は、米国で最も重大な自動車リコール事件となり、多くのメーカーがリコールを余儀なくされました。共通して使用されているエアバッグのインフレーター(ガス発生装置)は、衝突時に作動し、エアバッグを急速に膨らませて乗員を保護するように設計されています。しかし、内部の化学物質に欠陥があり、高熱・高湿度の環境下では時間の経過とともに劣化する可能性があります。
その結果、設計仕様以上の力が加わり、金属製のキャニスターが粉々になり、危険な破片が飛び散ってしまうことがあります。インフレーターが原因とされる死者は世界で27人、うち米国では18人、負傷者は数百人に上っていると報告されています。
GMは以前、グループ傘下のシボレー、キャデラック、GMCなど各ブランドでGMT900プラットフォーム採用しているモデル(アバランチ、エスカレード、シエラ、シルバラード、サバーバン、タホ、ユーコンなど)が、異なるデザインのインフレーターを使用しているため危険性は比較的低いと主張していました。
第三者テストを実施するなど、完全なリコールは必要ないことをNHTSAにアピールし、4年にわたってやり取りを続けてきました。しかし、結果として、NHTSAはGMの要求を拒否しました。
「GMの嘆願書、資料、およびパブリックコメントを検討した結果、NHTSAは、欠陥が自動車の安全性にとって取るに足らないものであることを立証する責任をGMは果たしていないとの結論に達し、嘆願書を拒否しました」(NHTSA)
この決定は、2007年モデルから2014年モデルまでの約590万台に影響を与えます。推定では、GMの総コストは12億ドル(1,246億円)とされています。
NHTSAのジェフリー・M・ジュゼッペ執行官は、次のように述べています。
「エアバッグのインフレーターの推進剤劣化の重大性(破裂や乗員への金属破片の散布など)を考えると、安全性には取るに足らないと判断するには、非常に堅牢で説得力のある証拠が必要です」
「GMがここで提示したものは、ある面では貴重で有益なものでしたが、証拠を個別に評価した場合も、全体として評価した場合も、GMT900のインフレーターの欠陥が重要ではないこと、あるいは安全性の問題として無視できることを示すには、あまりにも多くの欠点があります」
GMは現在、影響を受けた車両の所有者にどのように通知するか、リコールプロセスをどのように開始するか、スケジュール案を30日以内に提出しなければなりません。
声明では、当局の判決には同意しないが、決定には従うとしています。
「わたし達のクルマを運転する人々の安全性と信頼は最優先事項です。事実と科学的な記録に基づき、リコールは必要ないと考えていますが、NHTSAは対象車両のエアバッグ・インフレーターを交換するよう指示しました。数年にわたって実施された科学的評価に基づいて作成されたデータに基づき、NHTSAの見解には同意できません。しかし、当社はNHTSAの決定を遵守し、必要な措置を開始します」(GM)