無骨なパフォーマンスSUV  メルセデスAMG「G63」レビュー

ドアの閉まる音を聞くと、安心感を得られる。今時、そんなクルマも珍しいのではないでしょうか。メルセデスAMGが誇る不動のパフォーマンスSUV「G63」は、頼れるものが求められる今の時代にふさわしいクルマかもしれません。タフなルックスと贅沢な内装、パワフルなV8エンジンを搭載したラグジュアリー・モンスターをご紹介します。

重いハンドル、閉まらないドア

メルセデスAMG「G63」

(以下、米スラッシュギア編集部によるレビュー)

2020年モデルのメルセデスAMG G63は、その高額さ、ブルータリズムを感じさせるプロポーション、そして過剰なまでのパフォーマンスへのこだわりなどがよく知られている。だが、577馬力のパワーで遊んでも、心に残るのはドアだ。

メルセデスは、ドイツの自動車メーカーの中では珍しいことではないが、かなりこだわりの強い会社であり、些細なことにも気を配っている。2018年に伝統的なゲレンデヴァーゲンを一新した際、引き継がれたデザイン要素はいずれも非常に重要なものだったと言えるだろう。そのうちの1つがドアハンドルのデザインだ。

メルセデスAMG「G63」

大きくて、ちょっと不格好なハンドルは、そのままドアのメカニズムを表している。重く、しっかり閉めるためにはかなりの力を必要とする。正直なところ、最近のソフトクロージャー付きのメルセデスに乗っている人にとっては、なぜこんなに閉めるのに苦労するのかと不思議に思うだろう。その他の部分はとても贅沢なのに。

AMGチューンのモンスターSUV

AMGのチューニング部門は、標準のG550をベースに、とことんパフォーマンスを突き詰めた。ハンドメイドの4.0L V8ツインターボエンジン(最高出力577ps、最大トルク850Nm)とスピードシフトTCT 9速ATを搭載。AMGライド・コントロール・スポーツサスペンション、全輪駆動、高性能ブレーキシステムとパフォーマンスエグゾーストも装備している。

メルセデスAMG「G63」

さらに、G63には優れたロック式ディファレンシャルとローレンジのトランスミッションが採用されている。理論的には、G550と同様にオフロードを走ることもできるが、22インチの鍛造AMGクロススポークホイールを交換するのが先決かもしれない。薄いタイヤは荒れた路面には適さないだろうし、何より高価な鍛造ホイールを傷つけるのは苦痛を伴うはずだ。

メルセデスAMG「G63」

試乗した車両には、さまざまなオプションが装着されていた。156,450ドル(1,639万円)の車両価格に加え、ジュピターレッドのボディカラーが6,500ドル(68万円)、カーボン製ボディパーツが3,700ドル(38万円)、同じくカーボン製のエンジンカバーが1,500ドル(15万円)だ。

さらに、1,950ドル(20万円)のAMGナイトパッケージ、3,100ドル(32万円)のG manufackturインテリアパッケージ、2,200ドル(23万円)のリミッター解除などが追加されており、すべて合計すると182,545ドル(1,912万円)になる。

メルセデスAMG「G63」

試乗の際、街ゆく人々の視線が運転席へ注がれていた。黒塗りの巨大なホイールとサイドエグゾーストを備えた真っ赤なSUVが通りかかったら、思わず目を向けてしまうはずだ。V8サウンドをドロドロと響かせながら走っているのだから、近づいてこればすぐにわかる。

いまこそゲレンデヴァーゲンの魅力を

トップスピードは240km/hしか出ないが、0-97km/h加速は4.5秒で、まるで別世界のように感じる。もっと速いSUVも世の中には存在するが、G63には何か独特の中毒性がある。四角く切り落とされたボンネットや、がっちりとしたウィンカーを見ていると、デザイン事務所ではなく鉄工所で設計された鉄の塊のように感じる。なんだかバカバカしくて、やみつきになる。

メルセデスAMG「G63」

AMG G63を誰にでも勧めるのは難しい。標準のG550は、柔軟性のあるロック式デフシステムを最大限に活用することができるが、G63はシーンを選ぶ。「GLE 63 S」の方がパワフルで速く、なおかつ安い。エアサスペンションが採用されているので、コーナリングもいい。

結局のところ、ゲレンデヴァーゲンのドアがとても心強いと思うのは、それが明らかにローテクだからだ。特大のハンドルを強く引っ張ってドアを開け、その後、バタンと閉める。それでもうまく閉まらない場合は、さらに強く閉める。単純明快だ。

メルセデスAMG「G63」

内装では、12.3インチのディスプレイ、3ゾーンのクライメート・コントロール、シートヒーター、Android Auto/Apple CarPlay、さらにはアンビエントライトなど、ファンシーな装備が充実している。アダプティブ・クルーズ・コントロールとレーン・キーピング・アシストもある。甘いサウンドを奏でるBurmesterのオーディオシステムは、6km/l程度しかない燃費から気をそらしてくれるだろう。

メルセデスAMG「G63」

一般的に、私たちは荒削りな部分を許すことを「妥協」と考えているが、G63の場合、それはむしろ喜ぶべきものであり、その先に懐の深さを感じることができる。この1年、私たちは頼りになるもの、信じるに足る具体的なものを必要としているのではないだろうか。AMGはこのモンスターに途方もないパワーと贅を与えたが、そのすべてを支える強固な基盤があるからこそ、ゲレンデヴァーゲンは唯一無二の存在であり、他に類を見ない魅力を持ち続けているのだ。

総評 9点/10点

長所

  • 850Nmのトルクを持つSUVのアイコン
  • 圧倒的な存在感
  • オフロードの走破性(ホイールは選ぶ必要あり)
  • タフな外観とフィーリング

短所

  • 洗練性や繊細さには欠ける
  • 車内は他のSUVに比べて窮屈に感じる
  • 車載技術は他のAMGモデルほど新鮮ではない
林 汰久也

愛知県在住29歳/ハウスメーカーの営業を経て、IT系ベンチャーのメディア事業に参画。2020年よりフリーのライターとして活動開始/愛車遍歴:マツダ『RX-8』⇒シトロエン『C4』⇒スバル『フォレスター』&ホンダ『クロスカブ50』/ゲームはPS派だが、最近ゲーミングPCが欲しいと思っている。

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