高級SUVクラスでは新型トヨタ・ハリアーがトップの座を獲得

新型トヨタ・ハリアーが4代目になって、大都会にぴったり合う SUVに生まれ変わった。1997年に登場したハリアーは、プレミアムなSUVのジャンルを築いた重要なモデルと言える。そのエレガントでハイテクな新型バージョンは、うまい具合に市場のニーズに応えているようだ。というのは、4代目はかなり売れているからだ。月販目標3100台に対して、7月半ばでは、すでに4万5千台ほどの受注があったとトヨタから聞いた。コロナ禍の中で、6月16日に発表されたばかりなのに、意外な展開。

Photo by Peter Lyon

テールは新鮮で美しいけど、ノーズは保守的

でも、乗って見ると、その人気ぶりはジワジワと伝わってくる。1分走っただけで、第一印象は期待していた以上に良かった。同車は世界的な戦略車だけあって、その出来栄えは見事だ。パッと見てすぐわかるハリアーのシックな外観、内装の質感、走り、乗り心地、ハイブリッド・エンジンの性能、安全性はどれでもクラストップと言っても過言ではないだろう。

新型ハリアーのプラットフォームはRAV4と同様だが、当然ながらボディは全然違う。昨年の日本の最優秀車賞「日本COTY」を受賞したRAV4がゴツくてオフロード向けの外観であるのに対して、ハリアーは流れる曲線を重視したエレガントなシルエットになっている。リアでは出っ張るテールライトの立体的な形状が新鮮で美しいし、横顔の面の処理は上品。ところが、代表的なノーズの部分はそれほどスタイリッシュとは言い切れない。グリルやヘッドライト周りは丁寧な仕上がりになっているものの、グリルはテールほどインパクトがないし、保守的であまり新鮮味を感じない。デザイナーはテールほど冒険しなかったのだろうと感じるのは僕だけなのかな。

Photo by Peter Lyon

内装の質感は女性のハートを掴む

だが、キャビンは違う。運転席に座った瞬間にその大変身に驚く。内装の質感はかなりレベルが上がっている。ヘッドルームやレグルームはたっぷりあって、視認性がよく、ドライビング・ポジションが楽に取れる。インパネはスッキリしているし、今回のセンターコンソール、特にシフトノブ周り部分の奥深さが新しくて気持ちが良い。なんか高級なラウンジにいるようで、女性のハートを掴むような「美」まで採用している。内装で使用しているレザーやステッチももちろんだけど、ダッシュボードの真ん中を平行に走るパイピングは美しいし、ドア周りのアクセントも綺麗。レザーの触り心地、シートの座り心地や、全体の調和にこだわったトリムが特に女性の感性をくすぐるはず。トヨタの話によると、室内のデザインチームの中に女性が多くいるので、当然の結果だろう。

コロナ禍の中でも、ラッキーなことに1人の開発者に話が聞けた。「実は、ハリアーに使ったダンパーは日立製なので、足はとてもしっかりしているし、乗り心地が良いです。ステアリングも大幅に変えて、より素直に曲がるようになっていることがわかりましたか?」と、トヨタのトップガンのテストドライバーの1人で、凄腕技能養成部(!)の匠である片山智之が言う。もちろん、わかった。片山が言うとおりの走りだ。数百メートル走っただけで、ドライバーを安心させる要素が全部揃っていると感じた

Photo by Peter Lyon

加速性、ステアリングは好印象

まず、運転席に座ったら、シートのクッションのサポート性、360度の視認性の良さがすぐにわかる。しかもドライビング・ポジションはピンポイントに決まる。キャビン周りの質感も高級でスイッチ類は使いやすい。実際、走ってみると、222psを発揮するハイブリッド付き2.5Lの4気筒エンジンの低中速トルクは太いし、加速感は気持ち良い。(2.5LのNA 4気筒エンジンの選択もある)。シフトショックや嫌なノイズは出ないCVTとの相性も良い。1770kgという車重に対して、パワー不足は全くない。また、アクセルとブレーキのペダルの位置関係は完璧だし、ステアリングも素直で狙ったラインを綺麗にトレースしてくれるから、安心だ。

「今回ステアリングとハンドリングには特に力を入れた」と片山がいう。60km/hでコーナリングをしてみると、なるほど納得。SUVなのに、ボディはほとんどロールしないし、しかも何よりもアンダーステアが出ない。今まで僕が乗ったほとんどのトヨタ車はアンダーステア気味だったので、それは嬉しい進歩だ。ブレーキの制動力も十分だし、しかもブレーキペダルを踏んだ時の応答性がドライバーに自信を持たせる。それに乗り心地はしなやかで、キャビンには路面からのノイズや振動が伝わらない。このハイブリッドの4WD仕様はおすすめだ。特に落ち着いた挙動と、後輪を積極的に駆動して旋回にも活用するE-Fourのアクティブ感とのバランスが、ハリアーの走りにはぴったり。

当然、安全装備も充実している。リア・クロス・トラフィック・オート・ブレーキ、パーキング・サポート・ブレーキ、急発進を抑制するドライブスタートコントロール、バックガイド・モニター、プリクラッシュ・セーフティなどの優れたトヨタ・セーフティ・センス安全システムがついている。

Photo by Peter Lyon

ハリアーがかなり向上した理由は2つ

どうして今回、ハリアーの走りや素材がこれだけ良くなったかというと、2つの理由があると思う。一つは、トヨタの開発部のなかで、技術部とデザイン部がより良くコミュニケーションをとっていたし、二つ目は、ライバルの質が向上した現実への反応だという。今回、乗ってみて、その努力がよくわかった。4代目のハリアーは今までにない走りと乗り心地の良さ、それに、キャビンの質感は女性の感性も刺激する、大変良くできた高級SUVと言える。

強力なライバルと比較した時に、新型ハリアーの強い競争力が伝わってくる。スバル・フォレスター、マツダCX-5、レクサスNXなどと比べた場合、ハリアーの完成度の高さ、デザインの良さ、ハンドリングの良さがわかる。正直なところ、ルックスの格好良さでは、CX-5のセクシーな外観が勝つし、オフロードの性能ではフォレスターはトップに立つ。また、NXは、ハンドリングはハリアーに及ばない。ハリアーは、都会での走りや乗り心地、室内の質感や安全性などで、NX、フォレスター、CX-5を抜いてトップ座をゲットすると思う。1分乗っただけで、あなたもその走りの違いがすぐわかるはずだ。

ここは良い

*アンダーステアが消え、ハンドリングは良い

*リアのデザインは綺麗

*室内の質感はクラストップ

ここはもう少し

*ノーズのスタイリングは保守的ですぐ老ける感じ

*ホイールのデザインにはもう少し冒険して欲しかった

ピーター ライオン

1988年より日本を拠点に活動するモーター・ジャーナリスト。英語と日本語で書く氏 は、今まで(米)カー&ドライバー、(米)フォーブス、(日)フォーブス・ジャパン 、(英)オートカーなど数多い国内外の媒体に寄稿してきた。日本COTY選考委員。ワー ルド・カー・アワード会長。AJAJ会員。著作「サンキューハザードは世界の’愛’言葉 」(JAF出版、2014年)。2015から3年間、NHK国際放送の自動車番組「SAMURAI WHEELS」の司会を務める。スラッシュギアジャパンでは自動車関連の記事・編集を担当し、動 画コンテンツの制作に参画する

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