テスラは新興EV企業リビアン(Rivian)に対し、「従業員を引き抜いて機密情報を持ってくるように求めた」として提訴しました。リビアンは疑惑を否定しています。
テスラは、自動車業界で働く人々が企業間を移動するのは当たり前のことだと認めており、実際に他のメーカーから人材を引き抜いて自社の社員を増やしてきました。
しかし、リビアンは新入社員に企業秘密を持ってくるように勧めたと主張しています。この疑惑については以前から浮上しており、両社の動向に注目が集まっていました。
2009年に設立されたリビアンは、現在ピックアップトラック「R1T」やSUV「R1S」など複数のEVモデルを発表しており、生産への準備を進めています。また、ネット通販大手アマゾンから資金提供を受け、同社向けに電動配送トラックを製造する計画です。
スタートアップとして順調に成長しているリビアンですが、テスラの訴訟によりその道のりが大きく揺らいでいます。
テスラは、リビアンがこれまでに178人の元テスラ社員を雇用したと主張しています。訴状によると、そのうち70人はテスラからリビアンに直接転職したとのこと。
ブルームバーグの報道によると、訴訟にはリビアンと4人の元テスラ社員が名を連ねています。エレクトレックは訴訟の全文を公開しています。
4人の元従業員のうち2人は、テスラの調査員から質問を受けた際に「機密文書や専有文書」を持ち出したことを認めたとテスラは述べています。
問題の文書は、同社がEVの設計に使用しているテスラの技術に関するものではなく、人員配置に関するものだったと言われています。テスラが検討していた候補者のリストを、採用プロセスの詳細とともに持ち出したとのこと。
テスラの主張では、リビアンはこの活動に気づいていただけでなく、それを奨励していたといいます。
リビアンの採用担当者の1人は、同社には採用関係のテンプレートやフォーマットがないことを理由に、募集に関する重要な情報や給与明細書をはじめとする文書のコピーをテスラから入手。自身の個人的なGmailアカウントに送信したとされています。
リビアンは声明で、この疑惑を否定しています。
「我々は、EVの可能性に対する期待をリセットするというテスラのリーダーシップを称賛しています」
「リビアンは、パフォーマンスが高く、使命感を持ったチームで構成されており、当社のビジネスモデルと技術は、長年のエンジニアリング、設計、戦略開発の上に成り立っています」
「そのためには、テクノロジーと自動車の分野で活躍する何千人もの従業員の貢献とノウハウが必要です。リビアンに入社する際には、全従業員に、前の雇用主の知的財産をリビアンのシステムに導入していないこと、また導入する予定がないことを認識するよう求めています」
「この訴訟の申し立ては根拠がなく、リビアンの文化、倫理、企業方針に反するものです」
テスラは、盗まれたとされる文書を追跡するために「洗練された電子セキュリティ監視ツール」を使用したと主張しています。また、訴状によれば、リビアンの副社長が調査結果に異議を唱えた際に取った「軽率な態度」にテスラは不満を感じていたとのこと。
当然のことながら、リビアンはこれに反論しています。
「私たちは誠意を持って、あらゆる疑惑を深刻に受け止めることをテスラと話し合いました。この文書は弁護士との会話を誤って伝えています」
この訴訟は、今月初めにも25億ドルの資金調達に成功し、ポジティブなニュースの波に乗っていたリビアンにとって、不穏な影を落とす雨雲のようなものです。
リビアンは累計で50億ドル以上の資金を調達していますが、コロナ禍により「R1T」と「R1S」の生産開始を2020年後半から翌年に延期せざるを得なくなっています。