最も人気のあるモデルをリフレッシュすることは、クルマの世界ではチャンスであると同時にリスクでもあります。フォルクスワーゲン ティグアンは発売以来、累計600万台を売り上げた主力車種となっています。欧州では最も売れているSUVであり、今回の改良新型にも大きな期待をかけられていました。
「ティグアンはフォルクスワーゲンのベストセラーであり、私たちのラインナップの中で非常に重要なモデルだ」
フォルクスワーゲンの北米部門でプロダクトマーケティングを担当するハイン・シェーファーは、このように語っています。
「コンパクトSUVセグメントは成長を続けており、ティグアンはこのセグメントでのシェア倍増に大いに貢献してくれている」
フォルクスワーゲンによると、新型ティグアンは今年の7月上旬までに欧州で発売されます。北米では2021年10月の発売予定となっています。
トヨタ RAV4、ホンダ CR-V、マツダ CX-5など、数多くの競合車がある中で、ティグアンは非常に重要な位置を占めるモデルです。
ティグアンは、2018年にロングホイールベースの「オールスペース」が追加されたことで人気が加速しました。ショートホイールベースよりも全長が215mm長くなり、3列シート仕様となっています。
オールスペースは3列シートの需要が高い北米向けに開発されており、日本には未導入です。3列目のシートには大人が余裕をもって座れるほどのスペースは無く、子供や緊急時用として位置付けられています。
にもかかわらず、オールスペースの投入により2016年から2019年にかけて市場シェアが倍増したのです。売上の45%を占める前輪駆動モデルには3列シートが標準装備で、そうでないAWDモデルでも購入者の23%はシートをオプションで追加しているといいます。
近年のVWモデルと同様に、新型ティグアンは、ソリッドなスタイリングとスポーティな要素を融合させています。
フロントは完全にデザインが一新されました。LEDヘッドライト(全車標準装備)に加え、C字型の下部エアインテークを備えた分厚いフロントバンパーと大型グリルが採用されています。
また、ホイールのバリエーションも17インチから20インチまで幅広く用意されています。
リアには、新形状のLEDテールライトと簡単に開閉できるテールゲートを装備。「TIGUAN」のレタリングが「VW」のロゴの下に配置され、現行モデルとの差別化を図っています。
インテリアは、8インチのデジタルコックピットディスプレイを標準装備し、10インチの大型ディスプレイも用意するなど、大幅なアップデートが施されました。
インフォテインメントシステムは、6.5インチまたは8インチのタッチスクリーンに、最新世代の「MIB3」を搭載。Apple Carplayにワイヤレスで対応します。
その他、15色のアンビエントライト、グレードごとの装飾、イルミネーション付きのタッチボタンとスライダーを備えたステアリングホイールなども用意されています。
改良に伴って、ハイパフォーマンス仕様の「R」と、プラグインハイブリッドモデルが追加されました。
ティグアンRは2.0L 直列4気筒ターボを搭載し、最高出力315馬力を発揮。7速デュアルクラッチトランスミッションと「4MOTION」を採用しており、前後の車軸と後輪左右でトルク配分を調整可能です。また、専用サスペンションや21インチホイールなどを装備しています。
プラグインハイブリッドでは、アルテオンPHEVなどと同じパワートレインが採用されています。1.4L TSIと電気モーターを組み合わせ、システム出力241馬力を実現。バッテリーのみで50kmを走行できるほか、エンジンを使わずに最高130km/hまで加速するとのことです。
ディーゼルモデルも排気ガスの浄化システムを強化することで、窒素酸化物(NOx)の排出量を削減。環境性能を向上させています。