Aston Martinの伝統と革新:V12 Speedster 超限定生産を予定

伝説の名車がよみがえる。

Aston Martinは、「V12 Speedster」の超限定生産を発表しています。これは、英国を代表するスポーツカーブランドにとって、最も重要な価値観を体現するオープンカーです。世界中の顧客向けに生産されるのはわずか88台で、2人乗りで約700馬力を発揮するとみられています。

詳細はまだベールに包まれているものの、Aston Martinを代表する1台となりそうだ。

今のところ、Aston Martinはこの車の画像を公開していません。公に姿を見せるのは、おそらくV12 Speedsterが正式にデビューする年の後半まで待たなければならないでしょう。価格はまだ発表されていませんが、Aston Matinはすでに注文受付を開始しているというのだから驚きです(どんな価格になろうと、この車を求める顧客がいるということでしょうか)。

生産は、Aston Martinの社内特注チームである「Q by Aston Martin」による手作業により行われます。通常、この「Q」チームは既存の市販車に対して顧客の希望を取り入れるビスポーク、いわばオーダーメイドに近いカスタムを行っています。そして、今回は”もっと特別なもの”を作るために白羽の矢が立ったようです。

Aston Martinの魂を継承する象徴的モデル。

この車のモチーフとなっているのは、「DBR1」というクラシックカーです。モータースポーツに興味のある方はご存知かもしれませんが、今から約60年前の1950年台、世界的に有名(かつ過酷)なレースで並みいる競合を抑え、何度も優勝を飾った伝説的な名車です。例えば日産にとってGT-Rがそうであるように、Aston Martinのレーシングスピリットを象徴するモデルと言えます。

また、「Speedster」という名前が使われるのは、これが初めてではありません。同社は2013年に設立100周年を記念して「CC100 Speedster Concept」というコンセプトカーを発表しました。先述のDBR1のスピリットを継承するモデルで、新しいV12 Speedsterにも影響を与えています。2017年になると、「Vanquish Zagato Speedster」という限定モデルも販売されました。

モチーフのひとつになるであろう「CC100 Speedster Concept」は、ドアの中央部が透けていた。
それが継承されるとしたら、ドライバーは履いているズボンを通行人に見せながら走ることになる。

V12 Speedsterの主役は、なんといってもエンジンです。5.2L V12ツインターボの高性能バージョンで、Aston Martinによると、最大出力約700馬力、最大トルク約700Nmを発揮するようです(最終的なスペックは未確定)。ZF社製の8速ATとともに、ボディ後部に取り付けられます。

このエンジンは、パワーとスピードだけではなく、聴く価値のあるサウンドを生み出すでしょう。Aston Martinはこれを「豊かな個性」と呼び、エンジンサウンドと排気音に関しては特に力を入れているといいます。音を遮る屋根がないので、ドライバーは非常にパワフルなサウンドを楽しめるはずです。

デザインの詳細については、2020年後半にならないと確定版を見ることはできないでしょう。ただ、Aston Martinによると、このV12 Speedsterはモダンと伝統の融合であり、栄光をつかんだ1950年代のレースを思い起こさせるものだとしています。

英国スポーツカーの栄光を再び。

少し暗い話をすると、Aston Martinは会社として経営不振に陥っており、中国企業に買収される可能性も出ています。買収の是非は別にして、スポーツカーファンの端くれとしては残念な話題です。詳しくは、2020年1月20日のこちらの記事をご覧ください。

上記の記事内でも触れていますが、Aston Martin初の市販化EVとなる予定だったモデルが生産中止に追い込まれるなど、ショッキングなニュースもありました。ただ、その一方で、ブランド初のSUVの販売が決定するなど、明るい話題も出てきています。

V12 Speedsterは売り上げに直接貢献するモデルではないでしょうが、Aston Martinの揺るぎないレーシングスピリットを継承し、次世代へと伝える象徴的モデルとなるはずです。かつてDBR1がそうしたように、英国スポーツカーブランドの名を再び世界に知らしめることでしょう。

なお、V12 Speedsterは世界で88台しか生産されないため、日本で実際に目にする可能性は明らかに低いでしょう。最初の納車は2021年第1四半期に始まる予定ですが、もし、あなたが実車に出会う機会に恵まれたとしたら、それは間違いなく幸運なことです。

林 汰久也

愛知県在住29歳/ハウスメーカーの営業を経て、IT系ベンチャーのメディア事業に参画。2020年よりフリーのライターとして活動開始/愛車遍歴:マツダ『RX-8』⇒シトロエン『C4』⇒スバル『フォレスター』&ホンダ『クロスカブ50』/ゲームはPS派だが、最近ゲーミングPCが欲しいと思っている。

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