フォルクスワーゲンはアメリカに拠点を置く自動運転開発会社アルゴAI(Argo AI)に対し、26億ドルの出資を行ったと発表しました。VWグループのモデルに、新たな自動運転技術が搭載される可能性が広がりました。アルゴAIは2017年にもフォードから10億ドルの支援を受けており、今回の出資により2つのビッグな顧客を得たことになります。
出資に伴い、VWが自動運転技術開発のために2017年に立ち上げた子会社AID(Autonomous Intelligent Driving)は、アルゴAIに吸収されます。ミュンヘンにあるAIDのオフィスはアルゴAIの欧州本社アルゴ・ミュンヘンとなりますが、自動運転車の運用は現在、米フロリダ州マイアミやワシントンD.C.にて行われています。
同社の技術の特徴は、「ストリート・バイ・ストリート、ブロック・バイ・ブロック」と呼ばれる、特定の条件下においてのみ自走することができるシステムです。この技術は、レベル4の自動運転システムへの道を切り開くものといえるでしょう。
つまり、自動的にどこでも走り回るということではなく、あらかじめマッピングされた特定の場所(都市など)で安全かつ正常に動作するように設計されているのです。この技術は当初、法人需要向けに開発されていました。アルゴAIとフォードは現在、最高速度を制限したドライバーレスのシェアリングサービスを計画していると述べています。今回のVWとの提携により、その可能性は大幅に広がることになるでしょう。
アルゴAIにとっては、フォードとVWという2つの顧客を得たわけで、技術開発にかけられる資金も潤沢になったはずです。とはいえ、この2つの自動車メーカーが完全に協力するわけでもありません。
フォード傘下で自動運転開発を手掛けるフォード・オートノマス・ビークルズLLCのジョン・ローラー最高経営責任者(CEO)は、2023年までに40億ドル以上を同技術に費やすことになると述べています。
フォードはアルゴAIの技術開発にかかる費用を分担することになりますが、「だからといって、フォードが自動運転分野での支出を減らしているわけではない。フォードは今後も独立性を保ち、独自の自動運転サービスの構築において激しい競争を続けるだろう」とローラー氏は主張しています。フォードは基礎的な技術をVWと共有する可能性こそあるものの、同社との差別化を目指しているとのことです。
アルゴAIの最高経営責任者(CEO)であるブライアン・セールスキー氏とアルゴ・ミュンヘン副社長のラインハルト・シュトルレ氏は、次のように語っています。
「当社の自動運転システムは、これまでで最大の地理的展開の可能性を持っている。また、複数のブランドにまたがる多くの車種に搭載される可能性もある。VWとフォードがアルゴAIのシステムを採用し、人や物の移動をサポートすることで、私たちは世界にポジティブなインパクトを与えられるはずだ」