最新AIで会話もできる! メルセデスGLCは高級中型SUVの新スタンダードに

2016年に初登場したメルセデスベンツGLCは、すぐに高級中型SUVセグメントの代表的なモデルになった。しかし、GLCが出た時から導入され、競争力をグーンと上げてきた大ライバルのBMW X3やアウディQ5などの車種に対抗するために、GLCは驚くほどのアップデートを受けた。そういうのを「ビッグマイナー」と呼ぶらしいけど、英語では「フェイスリフト」ともいう。

Dピラー以外は視認性はかなり良い。
Photo by Peter Lyon

今度の人工知能は面白い!

今度のGLCに付いている A.I. (人工知能) 技術は凄い。クルマは会話ができる。本当に応答してくれるの。「はい、メルセデス!」と声を掛けたら、女性の声でドライバーの要望を聞いて答えてくれるわけだ。もちろん、よっぽど変な質問でなければ、新しく搭載された「MBUX」というメルセデスベンツ・ユーザー・エクスピリアンス、つまり、新インフォテーンメント・システムがA.I.を使って返事してくれる。「寒い」と言ったら、AIのロジックで自動的に車内の温度を上げてくれるし、「J-WAVEを聞きたい」と聞いたら、放送局を変えてくれるし、「美味しいラーメンを食べたい」とお願いしたら、近くのラーメン屋まで案内してくれる。だから、1人で長距離クルーズを走っている時でも、もう寂しくなることはない。

ところが、そのビッグマイナーを受けた4輪駆動の「GLC 220d 4-MATIC仕様」には、対話ができるMBUXがついただけでなく、全く新しいディーゼルエンジンが搭載され、室内も一新されている

外観にも工夫がこらされている。LEDライトがついた新デザインのヘッドライトと、よりスポーティなグリルが加わることによって、新GLCの顔はより存在感が増した感じ。テールライトのデザインも一新して格好良くなっている。それに対して、クロームメッキのテールパイプはなんちゃってエキゾーストだ。実はエンジンと繋がっておらず、見た目のためにつけられているだけ。本当のエキゾーストパイプはもっと下の部分に潜んでいるわけだ。

また、サイドにはランニングボードがあり、クルマに乗る時は便利だけど、降りる時は、気をつけなければ泥がついたランニングボードの外側の端でズボンを汚す可能性が十分ある

テールライトは一新したけど、エキゾーストはフェイク。
Photo by Peter Lyon

内装のデザインや質感が一新

新GLCの目立つポイントの1つは室内の出来だ。旧型と比べて、新型のステアリングホイールは3スポークの本革張りになり、同時に多くのスイッチ類がつけられたので、使いやすくなった。それに濃い茶色のウッド調とアルミ製のAC吹き出し口などのダッシュボードはとても品があるし、新しくなったセンターコンソールのコントロールは操作しやすい。でも、何よりも感動するのは、10.25インチのタッチスクリーンとMBUXの組み合わせ。このコンビネーションは間違いなくクラストップに浮上。

そして、ついにタッチで操作できるようになったスクリーンの高画質は見やすく、2画面で使える。しかし、冒頭で触れたMBUXのA.I.技術は上等だ。冷暖房、放送局、室内照明、GPSナビなどの調整や設定は自分の声で操作できるだけではなく、話術で遊べる。試しに、「はい、メルセデス。僕のことが好き?」と聞いたら、「道路と同じ位好きですよ」とか、「一番好きな曲を教えて」と尋ねたら、「私の名前を歌詞に入れたほとんどのラップ音楽が好き」とか「ジャニス・ジョプリンが好き」と、半分冗談で答えてくれたので、走りながら、かなり遊べる。

新しくついたMBUXは素晴らしい。
Photo by Peter Lyon

新しいディーゼルが力強いし、走りがよりスムーズ

新GLC220dの新パワーユニットは、24ps超えの最高出力194PS、最大トルク400Nmを発生する2リッター直4ディーゼルターボと9速ATの組み合わせ。このエンジンは「Cクラス」や「Eクラス」にも採用されている。最大トルクを1600rpmから発生させるパフォーマンスは出だしは力強くでスムーズで、0-100km/h は7.3秒と比較的速い。パワー不足を感じることは全くないけど、9速ATはスポーティに走ろうとする時のダウンシフトがたまに遅れることはある。旧型と比べて、この新しい2Lエンジンは、ディーゼルにありがちなガラガラの音や振動がかなり減った。

19サイズのタイヤやエアサスペンションには、エアスプリングと電子制御ダンパーが組み込まれる。この新しい足まわりのおかげで、乗り心地がクラストップに浮上したし、車両の安定性やコーナーでのフラット感が保たれる。4つ足を路面に吸い付かせたことによって、思う以上にコーナリングを楽しむことができる。不思議なのは、1900kg以上という重い車重をまったく意識させないこと。もちろん、GLCには、ACC、アクティブ・ブレーキ・アシスト、レーンキープなどのメルセデス最新の安全装備が付いているので、長距離クルーズも楽だ。

さて、競争の激しいセグメントでライバルと比較した時、新GLCはどうなのか。2018年に登場したX3とQ5、または2014~16年に出たアルファ・ロメオ・ステルビオ、レクサスNX、ポルシェ・マカンはそれぞれ魅力がある。X3やマカンは、GLCより走りがスポーティだし、ステルビオの外観の方が美しい。また、NXの方が信頼性が高いし、アフターセールス・サービスは優秀だろう。でも、ルックス、走り、高級感、新技術、内装の質感、安全性能などの総合的な評価からいうと、GLCこそがこのセグメントの新しいスタンダードだと言える。

ピーター ライオン

1988年より日本を拠点に活動するモーター・ジャーナリスト。英語と日本語で書く氏 は、今まで(米)カー&ドライバー、(米)フォーブス、(日)フォーブス・ジャパン 、(英)オートカーなど数多い国内外の媒体に寄稿してきた。日本COTY選考委員。ワー ルド・カー・アワード会長。AJAJ会員。著作「サンキューハザードは世界の’愛’言葉 」(JAF出版、2014年)。2015から3年間、NHK国際放送の自動車番組「SAMURAI WHEELS」の司会を務める。スラッシュギアジャパンでは自動車関連の記事・編集を担当し、動 画コンテンツの制作に参画する

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