📖 この記事で分かること
・GoogleのAIツール「Stitch」は言葉だけで画面デザインを作れる新サービス
・2025年12月に画像からデザインを作り直す「Redesign Agent」機能が追加された
・無料で月350回使えて、パワーユーザーは最大200回の追加枠も
・デザイナーも開発者も、アイデアをすぐに形にできる時代が来た
💡 知っておきたい用語
・UI(ユーザーインターフェース):スマホやパソコンの画面デザインのこと。ボタンの配置やメニューの見た目など、私たちが実際に操作する部分全体を指します
最終更新日: 2025年12月10日
Googleが開発したAIツール「Stitch(スティッチ)」が、デザインの世界に静かな革命を起こしています。2025年5月のGoogle I/O 2025で発表されたこのツールは、わずか半年で大きな進化を遂げました。
最も驚くべきは、その手軽さです。「ECサイトのトップページを作って」と話しかけるだけで、AIが数十秒でデザインを生成してくれます。専門的なデザインソフトの操作方法を覚える必要はありません。
Stitchの基本機能:言葉と画像でデザインを生成
Stitchは、Google Labsが提供する実験的なUIデザイン生成ツールです。自然言語での指示や、参考にしたい画像をアップロードするだけで、モバイルアプリやWebサイトの画面デザインを自動生成します。
実に興味深いのは、その対話型のアプローチです。最初に生成されたデザインに対して、「この部分の色を青にして」「ボタンをもう少し大きくして」といった修正指示を出すことで、まるで人間のデザイナーと会話するようにデザインを調整できます。
生成できるのは単一ページだけではありません。ECサイトであれば、トップページから商品詳細ページ、カートページ、マイページまで、複数のページを一貫性を持って生成できます。
対応している出力形式も幅広く、以下のような選択肢があります:
- HTML/CSS: そのまま実装可能なコード
- Figma形式: デザインツールでさらに編集可能
- AI Studio: Googleの開発環境へのエクスポート
実際の操作感:軽快で直感的なインターフェース
実際にStitchを使ってみると、その操作性の良さに驚かされます。動作は非常に軽快で、ストレスを感じることがありません。
左側のチャットエリアでプロンプトを入力すると、中央・右側のエリアに複数のデザインバリエーションが数十秒で表示されます。ページを切り替えたり、細かい調整を加えたりする際も、待ち時間はほとんどありません。
特に面白いのが「予測ヒートマップ」機能です。生成されたデザインに対して、ユーザーの視線がどこに集まりやすいかをカラフルなヒートマップで可視化してくれます。赤やオレンジの部分が注目されやすいエリア、青い部分があまり見られないエリアという具合です。
この機能により、デザインの段階で「このボタンは目立たないかもしれない」「ここに重要な情報を配置すべきだ」といった判断がしやすくなります。従来は実際にユーザーテストを行わなければわからなかった情報が、デザイン生成と同時に得られるわけです。

12月の重要アップデート:Redesign Agentが登場
2025年12月8日、Google Labsは「Shipmas(シップマス)」と呼ばれる連続アップデートの一環として、重要な新機能を発表しました。それが「Redesign Agent(リデザインエージェント)」です。
この新機能は、既存のWebサイトのスクリーンショットやURLを入力することで、そのデザインをAIが分析し、改善案を生成してくれるというものです。新しいGeminiモデル「Nano Banana Pro」によって駆動されており、既存デザインの良い部分を保ちながら、モダンなUIに作り直すことができます。
従来のStitchは「ゼロからデザインを作る」ツールでしたが、Redesign Agentの登場により、「既存デザインを改善する」用途にも対応しました。これは実際の開発現場では想像以上に価値があります。クライアントから「今のサイトをもっと使いやすくしてほしい」と依頼されたとき、複数の改善案を数分で提示できるのですから。
インタラクティブモード:動くプロトタイプへの期待
Googleは「インタラクティブモード」という機能も開発中です。この機能により、生成されたデザインを実際に操作できる動くプロトタイプとして実行できるようになる予定です。
ただし、2025年12月時点では、この機能はまだ一般公開されていないようです。一部のテストユーザーのみがアクセスできる実験的機能として開発が進められています。
正式リリースされれば、静止画のデザインを見て「こんな感じになるだろう」と想像するのではなく、実際にボタンをクリックしたり画面遷移を確認したりできるようになります。クライアントや開発チームへのプレゼンテーションが、格段にわかりやすくなるでしょう。
無料利用枠と料金体系
Stitchには2つの生成モードがあり、それぞれ無料利用枠が設定されています:
- Flashモード: 月間350回の無料利用枠(比較的シンプルで高速な生成)
- Experimentalモード: 基本50回の無料利用枠(より複雑で高品質な生成)
注目すべきは、パワーユーザー向けの特典です。2025年9月の発表によると、頻繁にStitchを使用しているユーザーに対しては、Experimentalモードの利用枠が50回から200回に増量されています。これは、Googleが本気でこのツールの普及を目指している証拠といえるでしょう。
この無料枠は、個人開発者や小規模チームにとって十分な量です。毎日10回以上使えることになるので、様々なアイデアを気軽に試せます。
AI Studioとの連携で開発が加速
2025年11月頃に追加された「AI Studioへの1-clickエクスポート」機能も見逃せません。
AI Studioは、Googleが提供する開発環境で、Geminiなどの最新AIモデルを活用したアプリケーション開発ができるプラットフォームです。Stitchで生成したUIデザインを、ボタン1つでAI Studioに送信できるため、デザインから実装までのワークフローが劇的に効率化されます。
従来は、デザインツールでUIを作成し、それを見ながら手動でコードを書く必要がありました。でも、この連携機能があれば、デザインのコンテキストを保ったまま、すぐにAIを使ったコード生成や機能追加に取りかかれます。
Figma連携で本格的なデザイン作業も可能
生成されたデザインは、業界標準のデザインツール「Figma」にシームレスに貼り付けることができます。これにより、AIで生成した初期デザインを基に、デザインチームでさらに細かい調整や、既存のデザインシステムへの統合が容易になります。
個人的には、この柔軟性が最も評価できる点だと感じています。AIは素晴らしいスタート地点を提供してくれますが、最終的な細部の調整は人間の感性が必要です。Figma連携により、「AIで8割を完成させ、人間が2割を磨き上げる」という理想的なワークフローが実現できます。
日本語対応の現状と注意点
ただし、正直なところ、現時点では日本語の認識精度には課題があることも報告されています。日本語プロンプトを使用する場合は、できるだけ具体的で簡潔な表現を心がけると、より安定した結果が得られるようです。
英語プロンプトとの精度差があるため、重要なプロジェクトで使用する場合は、英語での指示も検討すると良いでしょう。ただ、今後のアップデートで日本語対応が強化される見込みは高いです。
デザイン現場への影響と今後の展望
このツールがデザイン業界に与える影響は計り知れません。従来は何時間もかけていた初期デザイン案の作成が、数分で完了してしまうのですから。
でも、これはデザイナーの仕事を奪うものではないと考えています。むしろ、アイデアの具現化速度が劇的に向上することで、デザイナーはより創造的な部分に時間を使えるようになるはずです。細かいレイアウト調整よりも、ユーザー体験の設計や、ブランド戦略の立案に集中できる環境が整いつつあります。
開発者の視点から見ても、プロトタイプを素早く作成できることは大きなメリットです。クライアントとの認識のズレを早期に発見し、手戻りを減らせます。
今後のアップデートにも期待が高まります。インタラクティブモードの正式公開や、日本語対応の精度向上、より複雑なインタラクションの生成など、さらなる進化が予想されます。
よくある質問
Q: Stitchを使うにはGoogleアカウントが必要ですか?
A: はい、Googleアカウントでログインする必要があります。アカウントさえあれば、無料で月間最大350回(Flash)と50-200回(Experimental)利用できます。
Q: 生成されたデザインの商用利用は可能ですか?
A: Google Labsの実験的ツールという位置づけのため、商用利用については公式サイトの利用規約を必ず確認してください。現時点では、プロトタイプや社内検証目的での利用が主な想定用途と考えられます。
Q: デザインの修正は何回でもできますか?
A: 対話型の修正機能を使えば、生成後も何度でも調整可能です。ただし、大きな修正を繰り返すよりも、最初のプロンプトを具体的に書いた方が、希望に近いデザインが生成されやすいです。
Q: Redesign AgentとInteractive Modeの違いは?
A: Redesign Agentは既存デザインを改善する機能で、2025年12月に公開されました。Interactive Modeは生成したデザインを動かして操作できる機能ですが、まだ実験段階で一般公開されていません。
まとめ
Google Stitchは、UIデザインのハードルを大きく下げるツールとして注目に値します。2025年12月のRedesign Agent追加により、既存サイトの改善という実用的な用途にも対応しました。
無料で試せる環境が整っていますので、デザイナーでも開発者でも、まずは触ってみることをおすすめします。新しいアイデアを形にする体験は、想像以上に刺激的です。
AI時代のデザインワークフローが、ここから始まります。
【用語解説】
- UI(ユーザーインターフェース): スマホやパソコンで私たちが見て触る画面のこと。ボタンやメニュー、文字の配置など、すべてのビジュアル要素を含みます
- プロトタイプ: 製品やサービスの試作品。実際に動かして確認できるサンプルのことで、本格的な開発前に問題点を発見するために作られます
- Figma【フィグマ】: デザイナーに人気のデザインツール。複数人で同時に編集でき、Web上で動作するため、チーム作業に適しています
- AI Studio: Googleが提供する開発環境。AIを活用したアプリケーションの開発やテストができるプラットフォームです
- Redesign Agent【リデザインエージェント】: 既存のWebサイトやアプリのデザインを分析し、改善案を自動生成するStitchの新機能。2025年12月に追加されました
免責事項: 本記事の情報は2025年12月10日時点のものです。Google Labsの実験的ツールであるため、機能や制限は予告なく変更される可能性があります。Interactive Modeなど一部機能は開発中であり、一般公開されていない場合があります。商用利用を検討される場合は、必ず公式サイトの最新情報と利用規約をご確認ください。
Citations:
[1] https://stitch.withgoogle.com/
[2] https://developers.googleblog.com/ja/stitch-a-new-way-to-design-uis/
[3] https://dev.classmethod.jp/articles/google-ui-ai-stitch/
[4] https://shift-ai.co.jp/blog/24566/
[5] https://book.st-hakky.com/data-science/google-stitch-japanese-support-2025-ui-prompt
[6] https://blog.logrocket.com/google-stitch-tutorial/
[7] https://www.testingcatalog.com/google-is-working-on-interactive-mode-for-stitch-design-agent/
