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PayPal×Perplexity「Instant Buy」発表|AIチャットで即購入、50%還元も

2025年11月26日

📖 この記事で分かること

・AIとおしゃべりするだけで買い物が完了する新サービス「Instant Buy」が登場
・PayPalとPerplexity【パープレキシティ】が組んで、調べた商品をその場で購入できる仕組みを実現
・初回購入で50%キャッシュバック(最大50ドル)の期間限定キャンペーン実施中
・Google・OpenAIも注目する「AIで買い物」競争の最前線

💡 知っておきたい用語

・Perplexity【パープレキシティ】:質問に答えてくれるAI検索エンジン。GoogleやChatGPTのように情報を調べられるサービス
・エージェント型AI:人間の代わりに作業をしてくれるAI。今回は「商品を探す→選ぶ→買う」までを一気に手伝ってくれる

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最終更新日: 2025年11月26日

AIチャットで調べたらそのまま購入完了

「この商品いいな」と思ったら、別のサイトに移動せずにその場で買える——。そんな体験が、ついに現実になりました。

PayPalとAI検索エンジンのPerplexity【パープレクシティ】は2025年11月25日、新機能「Instant Buy」を米国で正式リリースしたと発表しました[1]。

従来のオンラインショッピングでは、商品を調べた後に各ECサイトへアクセスし、会員登録や決済情報の入力が必要でした。でも、Instant Buyを使えば、Perplexityとのチャット中に表示される商品カードから直接購入でき、面倒な手続きは一切不要です。

実に興味深いのは、このシームレスな体験を実現するために、PayPalが提供する本人確認機能や購入者保護プログラムがAIチャット内でそのまま使えるという点です[1]。つまり、「便利だけど安全性は大丈夫?」という心配もクリアされています。

ブラックフライデーに合わせた戦略的ローンチ

タイミングも絶妙です。リリースは感謝祭翌日のブラックフライデー当日。PayPalは初回購入者向けに50%キャッシュバック(最大50ドル)キャンペーンを12月1日まで実施しています[1]。

現在、デスクトップとWeb版で利用可能で、iOSとAndroidアプリ版は数週間以内にリリース予定とのことです。

対応マーチャントは既に5,000以上。初期パートナーとして、Abercrombie & Fitch(アパレル)、Ashley Furniture(家具)、Fabletics(スポーツウェア)、Adorama(カメラ)、NewEgg(PC・家電)などが参加しています。

PayPalの大きな布石

今回のInstant Buyは、実はPayPalが約1ヶ月前の2025年10月28日に発表した「Agentic Commerce Services」の最初の主要実装例です。

PayPalはこの発表で、既存PayPalマーチャントがAIプラットフォームで即座に決済を受け付けられる「agent ready」と、マーチャントの商品カタログをAIチャネルで発見可能にする「store sync」という2つの中核サービスを明らかにしました。

Perplexityとの提携は、この戦略の「第一幕」に過ぎません。実は、PayPalは同時期にOpenAIとも戦略的提携を発表しており、2026年からChatGPT内でもPayPal決済が利用可能になる予定です。さらに、Wix、Cymbio、BigCommerce、Shopwareなどとも戦略的パートナーシップを結んでおり、AI時代のコマース基盤を本気で目指しています。

つまり、今回の発表は単なる新機能リリースではなく、PayPalがEC業界の次世代インフラを握るための壮大な計画の一部なのです。

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Google・OpenAIへの挑戦状

注目すべきは、この動きがAIコマース競争の激化を示している点です。

OpenAIは2025年9月にChatGPT内での決済機能「Instant Checkout」を発表し、Etsyでは既に利用可能、Shopifyマーチャントも近日対応予定です。ただし、この機能ではマーチャントが取引手数料を支払う仕組みとなっています。

OpenAIとPayPalの提携についてはPayPal×OpenAI提携|ChatGPTで直接決済が2026年実現

一方、Instant Buyはユーザー(消費者)に対しては手数料無料です。ただし、マーチャント側の手数料体系やPerplexity側の収益化戦略については、現時点で公表されていません。

Googleも検索結果から直接購入できる機能を強化しており、AIショッピング市場は今まさに三つ巴の様相を呈しています。

PayPalの中小企業・金融サービス担当ゼネラルマネージャーのMichelle Gill氏は、「PerplexityとのコラボレーションはPayPalのエージェント時代におけるコマース革新の幕開けです」とコメント[1]。「数十年にわたるAI駆動型コマースをシームレスで相互運用可能にする取り組みの継続」と位置づけています。

エージェント型コマースとは何か

今回の発表で頻繁に使われている「エージェント型コマース」という言葉。簡単に言えば、「AIが人間の代わりに商品を探し、比較し、購入手続きまで代行してくれる」という概念です。

技術的には、Agentic Commerce(エージェンティック・コマース)と呼ばれ、AIエージェントが消費者の過去の検索履歴や購買パターンを学習し、リアルタイムでマーチャントのカタログにアクセスして最適な商品を提示する仕組みを指します。

Perplexityの最高ビジネス責任者Dmitry Shevelenko氏は、「エージェント的な部分は、答えからシームレスに購入できることです。ほとんどの人は自分で調査したいと思っています。それを効率化し簡素化する部分が、今回のローンチのエージェント性なのです」と説明しています。

つまり、完全自動化ではなく、「調べる→選ぶ→買う」のプロセスを一つのチャット画面で完結させることで、人間の判断を尊重しながら手間だけを削減する——そんな絶妙なバランスを目指しているわけです。

あなたの買い物体験はこう変わる

では、実際にInstant Buyを使うとどうなるのでしょうか。

従来のオンラインショッピング:

  1. Googleで商品検索
  2. 複数のECサイトを比較
  3. 気に入ったサイトで会員登録
  4. 配送先・決済情報を入力
  5. ようやく購入完了

Instant Buy使用時:

  1. Perplexityに「ワイヤレスイヤホンのおすすめは?」と質問
  2. AIが複数の商品を比較して提示
  3. 気に入った商品カードをクリック
  4. PayPal情報で即座に購入完了

正直なところ、この簡便さは想像以上です。特に、「ちょっと調べてみよう」と思った瞬間から購入までのハードルが劇的に下がります。

ただし、課題もあります。現時点では対応マーチャントが5,000以上とはいえ、Amazonや楽天のような巨大ECモールは含まれていません。また、日本での展開時期については未定です。

EC事業者にとっての意味

EC事業者の視点で見ると、これは大きな転換点です。

従来のSEO【エスイーオー】対策やWeb広告に加えて、「AIチャット内でどう発見されるか」という新しい競争軸が生まれました。Perplexityのようなプラットフォームにマーチャント情報を最適化して提供することが、今後の売上を左右する可能性があります。

PayPalのシステムを通じて決済が処理されるため、事業者側は購入者保護プログラムや不正防止機能を活用できます[1]。でも、プラットフォーム手数料やデータ共有の条件など、ビジネスモデルの詳細はまだ明らかになっていません。

マーチャント側の手数料体系が公表されていない点は、EC事業者にとって気になるところです。OpenAIのInstant Checkoutでは「低い一桁台の手数料(業界推測では1-5%程度)」とされていますが、Instant Buyの条件は現時点で不透明です。

今後の展開と競合の動き

AIショッピング市場は、今まさに「誰が標準になるか」の競争フェーズに入っています。

  • OpenAI: ChatGPT + Etsy連携(対応済み)、Shopify連携(近日対応予定)、PayPal連携(2026年開始予定)
  • Google: 検索結果からの直接購入機能強化
  • Amazon: Alexa経由の音声ショッピング
  • Microsoft: Bing AIでのショッピング機能

そして今回のPayPal × Perplexity。各社がそれぞれ異なるアプローチで市場を取りに来ている状況です。

個人的には、この競争が消費者にとって最も良い結果をもたらすと期待しています。各プラットフォームが使いやすさや安全性を競い合うことで、AI時代の買い物体験がより洗練されていくはずです。

よくある質問

Q: Instant Buyは日本でも使えますか?
A: 現時点では米国のみの提供です。日本での展開時期については公式発表されていません。PayPalは日本でもサービスを展開しているため、将来的な対応の可能性はありますが、対応マーチャントの確保や決済法規制への対応が必要になるでしょう。

Q: どんな商品が買えるのでしょうか?
A: 現在、Abercrombie & Fitch(衣料品)、Ashley Furniture(家具)、Fabletics(スポーツウェア)、Adorama(カメラ・電子機器)、NewEgg(PC・家電)など5,000以上のマーチャントの商品が購入可能です。今後、対応店舗は拡大していく予定とのことです。

Q: 返品や購入者保護はどうなっていますか?
A: PayPalの既存の購入者保護プログラムが適用されます。商品に問題があった場合の返金対応や、不正取引からの保護機能がPerplexity内での購入にも適用されるため、通常のPayPal決済と同等の安全性が確保されています。

まとめ

PayPalとPerplexityの「Instant Buy」は、単なる新機能ではなく、EC業界の構造変化を象徴する動きです。

「AIで調べる」と「ECで買う」が融合し、チャット一つで完結する体験は、今後の標準になる可能性を秘めています。ただ、現時点では対応マーチャントや地域が限定的で、マーチャント側の手数料体系も未確定。本当の勝負はこれからです。

重要なのは、今回の動きが10月28日に発表されたPayPalの「Agentic Commerce Services」戦略の一環であるという点。PayPalは単発の提携ではなく、AI時代のコマース基盤を本気で構築しようとしています。

PayPalのAI戦略の全体像についてはPayPal×OpenAI提携|ChatGPTで直接決済が2026年実現

Google、OpenAI、そして既存のEC大手がどう対抗してくるのか。2025年のホリデーシーズンは、AIコマース元年として記憶されるかもしれません。

【用語解説】

  • Perplexity【パープレクシティ】: AIを活用した次世代検索エンジン。ユーザーの質問に対して、Web上の情報を要約して回答する対話型サービス。従来の検索エンジンのようにリンクの一覧を表示するのではなく、直接答えを提示する点が特徴
  • エージェント型AI(Agentic AI): ユーザーの指示に従って自律的にタスクを実行するAI。単なる情報提供ではなく、「調べる→判断する→実行する」までを一貫して行う
  • Agentic Commerce Services: PayPalが2025年10月28日に発表したAI時代のコマース基盤サービス。「agent ready」(決済準備機能)と「store sync」(商品カタログ同期機能)の2つで構成される
  • API【エーピーアイ】(Application Programming Interface): 異なるソフトウェアやシステム同士が情報をやり取りするための「窓口」。今回はPayPalの決済機能がPerplexity内で動作するための技術基盤
  • シームレス: 継ぎ目がない、途切れないという意味。今回の文脈では、「調べる」から「買う」まで画面遷移なくスムーズに進む体験を指す
  • SEO【エスイーオー】(Search Engine Optimization): 検索エンジン最適化。Googleなどの検索結果で上位表示されるための施策。AIチャット時代には「AI最適化」という新しい概念が求められる可能性がある

免責事項: 本記事の情報は執筆時点(2025年11月26日)のものです。必ず最新情報をご確認ください。AI技術やサービス内容は急速に進歩・変更されるため、機能や利用条件は予告なく変更される場合があります。日本での提供開始時期や詳細については、PayPal公式サイトをご確認ください。

Citations:
[1] PayPal Newsroom – PayPal and Perplexity Launch Instant Buy – https://newsroom.paypal-corp.com/2025-11-PayPal-and-Perplexity-Launch-Instant-Buy
[2] PayPal Newsroom – Agentic Commerce Services – https://newsroom.paypal-corp.com/2025-10-28-PayPal-Launches-Agentic-Commerce-Services-to-Power-AI-Driven-Shopping
[3] CNBC – Perplexity announces free product – https://www.cnbc.com/2025/11/19/perplexity-ai-online-shopping-paypal.html
[4] PYMNTS.com – PayPal and Perplexity Debut Instant Buy – https://www.pymnts.com/artificial-intelligence-2/2025/paypal-and-perplexity-debut-instant-buy-ahead-of-black-friday-shopping
[5] ZDNET – Perplexity lets you instantly buy with PayPal
https://www.zdnet.com/article/perplexity-lets-you-instantly-buy-with-paypal-in-a-chat-now-and-get-up-to-50-back/
[6] OpenAI Blog – Buy it in ChatGPT – https://openai.com/index/buy-it-in-chatgpt/

KOJI TANEMURA

15年以上の開発経験を持つソフトウェアエンジニア。クラウドやWeb技術に精通し、業務システムからスタートアップ支援まで幅広く手掛ける。近年は、SaaSや業務システム間の統合・連携開発を中心に、企業のDX推進とAI活用を支援。

技術だけでなく、経営者やビジネスパーソンに向けた講演・執筆を通じて、生成AIの最新トレンドと実務への落とし込みをわかりやすく伝えている。

また、音楽生成AIのみで構成したDJパフォーマンスを企業イベントで展開するなど、テクノロジーと表現の融合をライフワークとして探求している。

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